研究課題/領域番号 |
21K21254
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
平林 卓己 神戸大学, 保健学研究科, 保健学研究員 (20911150)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | がん悪液質 / 骨格筋 / 軽度高気圧酸素 |
研究実績の概要 |
がん悪液質に伴う骨格筋の代謝障害の原因は,体内の酸素濃度と筋毛細血管数の減少に伴う骨格筋内の低酸素状態である.がん悪液質に伴う筋毛細血管数の減少に対しては,有酸素運動が効果的であるが,低酸素状態の改善には有酸素運動の介入のみでは不十分である.本研究の目的は,がん悪液質の骨格筋代謝障害に対する軽度高気圧酸素環境下の有酸素運動の効果を検証することである.先ず,軽度高気圧酸素環境への曝露がヒトの末梢組織の微小循環および代謝率に与える影響を検証した.健常者を対象とし,通常気圧(1.00ATA,酸素濃度20.9%)と軽度高気圧酸素環境(1.4ATA,酸素濃度35.0-39.5)の2条件でそれぞれ70分間曝露させた.その結果,軽度高気圧酸素への曝露は動脈血酸素飽和度,皮膚毛細血管の血流速度と血流量,副交感神経活動および安静時代謝率を増加させた.これらの結果から,軽度高気圧酸素環境への曝露が溶存酸素量を増加させることで末梢組織への酸素供給量を増加させることを確認した.また,副交感神経活動を調節することにより末梢組織における毛細血管の血流を増加させる可能性が示唆された.さらに酸素供給量と血流の増加は,代謝の亢進にも寄与した可能性が考えられた.この予備的検証で得た結果から軽度高気圧酸素環境はがん悪液質における骨格筋内の低酸素状態を改善し,代謝障害を予防する可能性が確認できた.したがって,今後は実際にがん悪液質モデル動物を用いて検証していく計画である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の影響を受けて実験が順調に進まなかった.また,がん悪液質モデルマウス作製について,いくつかの問題が生じたため細胞の種類や投与方法の改善を要したことで当初の予定よりもやや遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
がん悪液質モデルマウスはB16F10細胞を使用してがん悪液質を誘発する予定である.このがん悪液質モデルマウスに対して軽度高気圧酸素介入を行い,骨格筋の毛細血管およびミトコンドリア機能を免疫組織化学染色,Western blot法,RT-PCR,ELISA等によって解析し,それらを指標として効果判定を実施する予定である.また,軽度高気圧酸素と有酸素運動の併用介入による実験も同時に進める計画である.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画よりも研究がやや遅れているため,本年度購入予定であった実験動物およびタンパク質解析用の抗体を購入しなかったため相当額が次年度へと繰り越しになった.
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