本研究の目的は,人工知能の手法の一つである機械学習を活用して,変形性膝関節症患者の異常な歩行パターン評価の方法を構築することとしている。そのため,研究1として,歩行パターン評価の妥当性の検証を行なった。研究2としては,簡易デバイス(マーカレスモーションキャプチャシステムや慣性センサー)による歩行パターンの評価方法の検討を行なった。研究3としては,簡易デバイスから得られるデータを使用し,機械学習による膝重症度判断方法の検討を行なった。 研究1では,変形性膝関節症患者24例を縦断調査することができた。ベースライン時の歩行パターンが異常であるほど,将来の身体活動量が低下しやすいという知見を得た。研究2では,変形性膝関節症患者50例の歩行データを収集した。変形性膝関節症患者の歩行パターンを,専門職の肉眼による評価(既存の7項目の尺度を使用)と簡易デバイスによる評価を実施し一致度を検討した。研究3では,研究2と同様のサンプルを使用した。簡易デバイスから得られたキネマティクス指標を使用し,膝重症度に影響する要因を機械学習によって検討した。しかし,サンプルが予定通りに収集できなかったため,アルゴリズムの精度の検証や交差妥当性の検証に課題が残った。 現時点では,変形性膝関節症患者の歩行パターン評価の構築には至っていないと考えられる。今後の課題としては,症例数を増加しアルゴリズムの妥当性を検証することで汎用化に繋がると考えられる。
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