腰椎椎間板変性は野球選手に好発し、重症化すると椎間板ヘルニアとなり、競技復帰まで長期間を要する。野球では投球・打撃・守備といった動作があるが、どのような身体的特徴を有する選手において、どの動作が椎間板へ負荷を与えるのか明らかになっていない。運動前後の磁気共鳴画像(MRI) 撮影よって、運動による椎間板への負荷を非侵襲的に評価できる手法があり、対象者の身体的特徴と各野球動作による椎間板への負荷との関連を明らかにする研究を実施した。本研究は、椎間板へ大きな負荷を与える野球動作を明らかにし、野球選手の椎間板変性発症メカニズムを解明する一助になる。また、身体的特徴と各野球動作による椎間板への負荷との関連を明らかにすることで、椎間板変性発症の予防方法を検証する今後の研究につながる。さらに、本研究で用いる椎間板への負荷の定量化方法を示すことで、椎間板変性が好発する他競技に関しても、この手法による検証が波及することが期待される。 対象は野球経験を有する健常成人男女11名とし、反復性の投球・打撃・守備動作前後のMRI撮影と関節可動域計測を、各実験日を1週間以上空けて実施した。解析結果より、立位骨盤前傾動作時および自重スクワット膝関節90度時の腰椎前弯角度と守備動作による椎間板への負荷を表すT2値変化率に有意な正の相関関係を認め、腰椎前弯可動性が小さい場合や守備姿勢で大きな腰椎前弯角度を保持できない場合に、椎間板への負荷が大きくなることが確認された。 最終年度は、上記の内容を3つの学術集会で発表した。また、学術論文投稿に向けて準備を進めた。 野球選手の腰椎椎間板変性を予防するためには、大きな腰椎前弯可動性や腰椎前弯角度保持が要求され、腰椎前弯角度に着目した選手へのアプローチが競技現場でも期待される。
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