本研究では、実世界アプリケーションのデータ表現として用いられるグラフ構造の中でも、不均衡ラベルを持つグラフデータ、長時系列の動的グラフデータの特徴を捉えるGNNモデルとソフトウェアアーキテクチャの最適化を提案した。不均衡ラベルに対しては、ヘテロジニアスグラフを構築し、ヘテロジニアスGNNモデルで学習する方法を提案することで、金融取引ネットワークの不正アカウント予測において高い性能を実現した。また、動的な大規模グラフの特徴を長期的なコンテキストで捉えるSpectral Waveletを、トポロジカルデータ解析で知識グラフの関係性の補完を効率的に評価する手法をそれぞれ提案した。
また、本研究と並行して企業(自動車会社、新聞社、人材紹介会社)との共同研究を進めていく中で、各企業が解決すべき本質的な問題設定・データにもラベルの不均衡に関わる技術的課題が存在していることが分かった。本研究の成果として提案した手法は、このような社会的問題への応用可能性があり、今後もその実証を進めていく予定である。
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