小体積センサノードによる効率的な無線通信技術の確立に向けて,無線給電技術と無線通信回路で一部の回路を共用する手法に注目し,研究期間全体を通じて研究を実施した.最終年度は特に,微弱な無線給電用磁界に相乗りすることで磁界式の極省電力な無線通信をする方式について,理論検討と実機検証を実施した.コイル間の磁界結合を利用した無線通信では,送信ノードのコイルが生成する磁界強度の変化を大きくすることで,より遠距離の通信が可能である.一方で,強力な磁界を生成するためには,コイルに大電流を供給する必要があるため,消費電力の増加が課題となる.そこで本研究では,無線給電用の磁界がセンサノードのコイルを貫いた際に,センサノードのコイルに誘導電流が流れることに着目する.無線給電用磁界によりセンサノード内のコイルに流れる誘導電流を,高速にスイッチングする手法を提案した.このようにすることで,センサノードはコイルに通電するための電力を消費することなく,コイルを流れる電流量を短時間の内に変化させることができる.すると,センサコイルが生成する磁界強度が短時間に大きく変化するため,結果として近傍のコイルに大きな誘導起電力が発生する.本研究では,この近傍コイルに生じる誘導起電力を通じて情報伝達が可能であることを確認した. 研究期間全体を通じては他に,電磁波が伝播しづらい水中において,水そのものを電気の伝導体として用いることで,給電と通信を両立する方式を検討した.具体的に,水槽の両端に電極を設置し,電極に通信信号を兼ねた給電用電圧を印加することで,8mm角のセンサノードに,マイクロコントローラや周辺回路が動作するのに十分な4.78mWのエネルギー供給が可能なことを明らかにした.また,前述の電力供給を行いながら,9600baud以上の速度で無線通信が可能であることを明らかにした.
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