研究課題/領域番号 |
21K21288
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
原 崇徳 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (70907881)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | NFV network / Service chaining / Capacitated SPTP / Graph neural network / Reinforcement learning |
研究実績の概要 |
2021年度は,(1) 数理最適化に基づく手法の確立と評価,(2) 機械学習に基づく手法の確立,について実施した. 数理最適化に基づく手法に関しては,まず,容量制約付き最短経路ツアー問題(Capaciated Shortest Path Tour Problem: CSPTP)に基づくサービスチェイニング(Service Chaining: SC)の最適性と処理時間の間のトレードオフを調査した.CSPTPに基づくSCはNP困難相当の問題であることが知られているため,先行研究に基づきラグランジュ緩和により,CSPTPをSPTPに変換し,劣勾配法を用いたラグランジュ乗数の制御に基づく近似解法を提案した.シミュレーション評価により,ラグランジュ緩和に基づく近似解法の特性を既存手法であるCSPTPに基づく整数線形計画(Integer Linear Programming: ILP)や貪欲法と比較して,定量的に分析した.その結果,ラグランジュ緩和に基づく近似解法は,CSPTPに基づくILPと比較して,はるかに小さい処理時間で同等の性能を維持できることを確認した.これらの研究成果について,国内会議3件で報告した.また,2022年4月に開催される国際会議IEEE/IFIP Network Operations and Management Symposium (IEEE NOMS 2022) で報告する. 機械学習に基づく手法に関しては,グラフニューラルネットワークと深層強化学習を用いたCSPTPに基づくSCの解法を設計した.具体的には,提案手法はネットワークのトポロジ変化をグラフニューラルネットワークで追随しながら,ネットワークの状態から強化学習により,適切なサービスパスを実現している.シミュレーション実験より,提案手法の基本特性を評価した.研究成果を2022年4月の国内研究会で報告する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在までの進捗状況として,(1) 数理最適化に基づく手法の確立と評価,(2) 機械学習に基づく手法の確立と評価,が挙げられる.数理最適化に基づく手法では,容量制約付き最短経路ツアー問題(Capaciated Shortest Path Tour Problem: CSPTP)に基づくサービスチェイニング(Service Chaining: SC)の最適性と処理時間を両立するラグランジュ緩和に基づく解法として,SPTPの制約に関する全ユニモジュラ性を考慮した最適性を維持したILPの線形緩和法についても同様に検討した.さらに,ネットワーク機能の配置問題に取り組むために,提案したCSPTPに基づくSCの近似解法をサービスチェイニングと機能配置(Service Chaining and Function Placement: SCFP)問題に発展させ,提案手法の性能を計算量と最適性の観点から,分析した. この研究成果を雑誌論文にまとめている.一方で,機械学習に基づく手法では,グラフニューラルネットワークと深層強化学習を用いたCSPTPに基づくSCの解法を確立した.シミュレーション評価により,グラフニューラルネットワークが需要動向やリンク・ノード障害によるトポロジ変化に対する適用性にどの程度貢献しているのかを分析した.これまでに得られた成果を国際会議で報告する準備を進めている.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,容量制約付き最短経路ツアー問題(Capaciated Shortest Path Tour Problem: CSPTP)に基づくサービスチェイニング(Service Chaining: SC)について,(1) 得られた研究成果の報告,(2) 機械学習に基づく手法の性能改善,(3) 現実的なネットワークに対する汎化能力の調査,(4) 需要動向や障害によるトポロジの動的変化への適用性の分析,に取り組む.まず,数理最適化に基づく手法の研究成果を雑誌論文で報告し,機械学習に基づく手法でこれまでに得られた研究成果を国際会議で報告する予定である.次に,これまで検討した機械学習に基づく手法の更なる性能改善と汎化能力の獲得を目指して,グラフ拡散などのトポロジ拡張を導入し,トポロジ拡張による改善効果を定量的に分析する.更に,提案手法がどの程度需要動向や障害によるトポロジの動的変化への適用性に貢献できるのかを明らかにするとともに,実ネットワークへの汎化能力を調査する.得られた研究成果を雑誌論文1件に報告する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は,コロナ禍に伴う国内会議・国際会議のオンライン化により,旅費がかからなかったためである.昨今,国内会議・国際会議のオンサイト化が進んでいることから,次年度使用額をこれらの旅費として利用するとともに,評価実験に必要なマシンの購入のための物品費として利用する.具体的には,次年度使用額のうち,10万円を旅費にあて,残りを部品費に当てる.
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