研究課題
移動体通信サービスは世界中に普及している.携帯端末と基地局間の無線通信は,第三者による盗聴や改竄を防ぐ目的で暗号技術が採用されている.本研究では,移動体通信網の世界標準暗号である共通鍵暗号KASUMIに対し,積分攻撃に対する安全性を明らかにする事を目的とする.共通鍵暗号KASUMIが安全で無い場合,盗聴や改竄の脅威が現実的となり,日本国民が移動体通信サービスを安全に利用することが困難になる恐れがある.既存研究では,杉尾らが分割属性による積分特性探索を行っている.然しながら,既存研究では入出力サイズに合わせた7ビット又は9ビット単位の解析しか実施されていなかった.そこで本研究では,共通鍵暗号KASUMIに対し,混合整数線形計画法(MILP)を応用した1ビット単位での詳細な積分特性探索を行い,得られた特性から積分攻撃に対する安全性を明らかにする事を目的とする.2021年度の研究では,既存研究を拡張してMILPを用いた1ビット単位の積分特性探索を行う手法を開発した.その結果,4.5段の積分特性が存在する事を明らかにし,その得られた積分特性を用いて7段縮小版のKASUMIが秘密鍵の総当たり攻撃よりも効率的に解読可能であることを示した.この成果は電子情報通信学会の論文誌で発表している.2022年度の研究では,最小構成要素のS7-boxに対して1ビット単位分割属性(BDP)の伝搬特性を解析した。その結果,S7-boxのブール代数展開式を考慮した評価が可能であることを明らかにした.この成果は北海道支部大会で発表している.また,サイズが大きいS-boxの解析手法に関する関連研究を調査し,これらの手法を組み合わせる事でS9-boxの解析に道筋をつけた.
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)
IEICE Transactions on Fundamentals of Electronics, Communications and Computer Sciences
巻: E105.A ページ: 1309~1316
10.1587/transfun.2021EAP1124