研究課題/領域番号 |
21K21294
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
山本 洋太 東京理科大学, 工学部情報工学科, 助教 (50906740)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | ハイパフォーマンスコンピューティング / 専用計算機 / FPGA / 3次元映像 / ホログラフィ |
研究実績の概要 |
電子ホログラフィは,3次元情報を忠実に再生可能な唯一知られた方式である.究極の3次元映像提示手法とも呼ばれ,注目を集めている.この方式では,光の振る舞いをコンピュータでシミュレーションすることで得られる計算機ホログラム(CGH: Computer-Generated Hologram)を計算する必要がある.CGHの計算量は膨大であり,現状の計算機性能ではリアルタイム処理に十分ではなく,実用化への大きな課題となっている.本研究では,FPGAを利用して,電子ホログラフィ計算に特化した専用プロセッサを開発することで,計算を超高速化する.専用プロセッサによる電子ホログラフィ実用化への指針を示す. 開発するプロセッサは,短期的には電子ホログラフィ計算を高速化し,ヘッドマウントディスプレイを高性能化する.長期的には専用回路部分を書き換えることで,エッジで高性能な機械学習を可能とするInternet of Things(IoT)システムなどへの応用も期待できる. これまでに電子ホログラフィ専用計算回路の設計およびFPGAへの実装を行った.電子ホログラフィで計算するCGHには位相型と振幅型の2種類がある.振幅型は比較的計算量が少なく,位相型は計算量が多いが,回折効率に優れ良質な再生像を得られる.実用化へは位相型が有力な方式である.一方で,計算の複雑さのため,これまでのFPGA実装方式では,振幅型に比べ位相型の実装は性能が半分になる問題があった.本研究では,ヒルベルト変換を利用した位相型CGH計算回路を新たに設計し,実装まで行った.従来よりも大幅に必要なFPGAリソース量を抑えることができ,良好な結果を得た.計算性能も理論値通りのパフォーマンスを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り,電子ホログラフィ専用計算回路の設計およびFPGAへの実装を行った.従来よりも大幅に必要なFPGAリソース量を抑えることに成功し,良好な結果を得た.計算性能も理論値通りのパフォーマンスを得た. 一方で,世界的な半導体不足により,当初使用を予定していたFPGAボードがまだ入手できていない.短期で入手可能であった小リソースのFPGAで代用することで,設計・実装を進めた.専用計算回路内部の並列数をパラメータで変更可能な設計にしたため,今後利用する大規模FPGAのリソースに合わせて,簡単に移行することが可能である.最終的には予定通りの性能が得られる見通しである.
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今後の研究の推進方策 |
電子ホログラフィ専用計算回路の実装・性能評価を引き続き行う.具体的には,FPGAを複数台用いて電子ホログラフィ計算が可能なクラスタシステムを構築し,大規模点群(数十万点)での電子ホログラフィ計算へと挑戦する.再生像の評価などを行い,開発したシステムの実用性を評価する.また,補助検討として,開発した専用計算機システムの他分野(機械学習・深層学習分野)への応用を検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定通り発注は完了しているが,世界的な半導体不足により,納入が遅れている.支払いが次年度へ繰り越されたため,大きな次年度使用額が生じた.
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