本研究課題では前年度において、スケールフリー・フラクタル・ネットワーク(SFN)に典型的な性質である負の長距離次数相関が一般のSFNにおいて果たす役割を解明するために、次隣接距離に次数相関を有するネットワークを生成し、パーコレーション転移における臨界的性質を数値計算によって調べた。今年度では、パーコレーション臨界点だけでなくより広義の頑強性と負の長距離次数相関の関係を明らかにするため、前年度に生成したネットワークサンプルを用いてノードおよびエッジのランダム破壊とノードのターゲット破壊という異なる種類の損傷に対するネットワークの頑強性を調べた。スケールフリー・ネットワークのように次数ゆらぎの強いネットワークにおいては次数相関やクラスターによって少数のノードが密に結合したコア構造が出現することが予想される。今年度はこのようなコア構造に着目した頑強性の評価指標をパーコレーション臨界点に加えて採用しネットワークの頑強性を評価した。これにより、ランダム破壊とターゲット破壊の両プロセスにおいて大域的連結性およびコア構造に関する頑強性はどちらも長距離次数相関によって大きく変化することが明らかになった。一方で、負の隣接次数相関を有するネットワークにおける頑強性の変化は正の次隣接次数相関を有するネットワークにおいて顕著であり、SFNのような負の次隣接次数相関はどの破壊のどの指標においても大きな変化が与えないことが明らかになった。これらの結果から得られた知見は、SFNの起源と頑強性の関係について有益な情報を融資ており、また、多様なネットワーク破壊に対して頑強なネットワークの設計への応用が期待できる。以上の研究成果は国際学会および日本物理学会で発表し、現在投稿論文の準備中である。
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