脳活動のみからコンピュータや外部装置の制御を行うブレイン・コンピュータ・インタフェース (BCI) は、筋萎縮性側索硬化症 (ALS) などが原因で運動機能が低下した患者にとって、非常に重要なコミュニケーション手段の一つである。本研究では、脳波から意思に関する情報を抽出する手法の確立により、BCIを用いたコミュニケーションの実用可能性を高めることを目的として、実験・解析を行った。 ALS患者2名を対象として、脳波計測実験を実施した。実験では、電気による感覚刺激と想起した意思の条件づけを事前に行った対象者が、「はい」または「いいえ」を想起する間の脳波を頭皮上に配置した電極を用いて計測した。実験で得られたデータから、「はい」と「いいえ」のどちらを想起しているかを脳波からリカレントニューラルネットワークを用いて識別するBCIシステムを構築した。識別の結果、チャンスレベルより統計的に有意に高い精度が得られたことから、本研究で用いたBCIシステムの患者への有効性が確認された。また、BCIシステムの頑強性の向上を目的として、脳波から対象とする脳活動信号のみを抽出して使用する解析を行った。その結果、計測した脳波を全て特徴量とするのではなく、先行研究において感覚連想との関連が報告されている脳領域の信号を反映する特徴量を抽出して使用することで、異なるセッション間の識別においてより高い識別率が得られた。
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