研究実績の概要 |
当該年度は,A)光沢感と瞳孔反応の関係性のモデル化,B)光沢感と魅力の瞳孔反応の違いの検証,の2点を実施した.Aでは,光沢感評定値と瞳孔反応計測が紐付いたデータをもとに,「瞳孔径が光沢感評定値,画像条件,画像特徴量など,どのような要因の組み合わせで最も予測できるか」を線形混合効果モデルを用いてモデル構築を行った.従属変数としての瞳孔径は刺激呈示区間3,000msの最小瞳孔径とした.独立変数として,1)光沢感評定値,2)注視点1度視野内の平均輝度,3)画像条件(オリジナル,画素シャッフル),4-7)画像特徴量(輝度ヒストグラムの平均,分散,歪度,尖度)の7種を設定した.The maximal random effects structure (Brauer and Curtin, 2017; Barr et al., 2013)に則して,最も複雑なモデルからbackward reducing methodで変数を減らし,当てはまり最もよい変数選択の組み合わせを探索した.その結果,光沢感評定値が高く,分散が高いときに,瞳孔径の縮瞳が有意に予測された.前者は物体表面のハイライトによって生じる,輝いて見える認知的要因によって瞳孔径が縮瞳したことを示唆し,後者はコントラストが光沢感に寄与するという,先行研究の報告を支持する.加えて,画素シャッフル条件のときに瞳孔径が有意に散瞳することも予測された.これは物体が曖昧なことによる認知的負荷が瞳孔を散瞳させたと示唆する.以上の成果をもとに学術論文1本を改訂し,投稿した.Bでは,光沢感評定に加えて,魅力評定と瞳孔反応を同時に計測する実験を行った.その結果,魅力評定との関連が示唆される瞳孔反応は,光沢感の瞳孔反応と比較して,時間的に遅い段階で散瞳効果がより大きいことがわかった.本成果は国際学会(ECVP2023)にて発表予定である(採択済).
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