本年度は、本年度の研究活動では、関数データ解析を活用したオミックスデータ解析手法を研究した。具体的には、生体分子の発現量における加齢に伴う非線形変化をデータ駆動型で同定し、それらのパターンに基づいてマーカーを分類する新しいデータ解析法を開発した。老化研究において、「身体の老化の程度」を評価するためのバイオマーカーの開発は大変重要な課題である。従来、老化バイオマーカーの探索では主に年齢との線形関係を前提としているが、加齢に伴う非線形な変化も多く存在するとされている。例えば、加齢性疾患の発症リスクは年齢と比例して上昇するわけではなく、中年以降に加速度的に増大することが示唆されている。今回開発した新たなデータ解析手法であるDICNAP(Data-driven Identification and Classification of Nonlinear Aging Patterns)法を用いることで、生体分子マーカーの加齢に伴う非線形変化パターンをデータ駆動的に調査し、それに基づいた老化バイオマーカーの解析が実現可能になることを示した。さらに、DNAメチル化の情報を網羅的に取得したメチロームデータセットに提案した手法を適用することで、DNAメチル化マーカーにおける非線形な加齢変化パターンの全体像を明らかにした。これらの成果は、老化研究において新たな視点を提供するだけでなく、関数データ解析を活用したオミックスデータ解析手法の拡張にも寄与することが期待される。 本研究期間を通じて、医療画像データおよびオミックスデータを対象に、生命科学データに対する幾何学や関数データ解析を用いた新規のデータ解析手法を研究した。
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