研究課題/領域番号 |
21K21318
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
田中 悠一朗 九州工業大学, ニューロモルフィック AI ハードウェア研究センター, 助教 (70911288)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 脳型人工知能 / 身体性 / ロボット / ハードウェア |
研究実績の概要 |
2021年度は,ロボットの身体から得られる個々の情報を記憶し,想起する機能をもつAIモデルの考案に取り組んだ.特に,当機能の実現方法として,レザバーコンピューティングをベースとする手法を模索した.取り組みの一つとして,身体から得られた感覚情報を記憶し,ロボットが任意の物体を「触ったことがあるか」を判断できるシステムを開発した.ここでは,ロボットが物を掴んだ時,触覚センサから得られた感覚情報をレザバーに与え,学習したことのある感覚情報のみを想起できるように学習を調整した.この結果,実際の感覚情報とレザバーの想起出力の比較により,その感覚情報が学習したことがあるものか否かを判断できるようになった.この学習は少量のデータによって実現されており,現行の統計的AIでは処理困難な一機能を実現できたといえる.ここで得られた成果は,第39回日本ロボット学会学術講演会にて報告済である.また,記憶・想起に用いるレザバーの性能拡充を目的とし,時定数が異なる複数のレザバーを組み合わせることで,異なる周波数を持つ様々な入力に対して柔軟に対応するAIモデルの考案にも取り組んだ.ここで得られた成果は,国際会議NLSW2021,学術雑誌Nonlinear Theory and Its Applications, IEICEにて報告済で,特許出願も行った.さらに,ロボット競技会RoboCup@Home(日本大会)にて,ロボットが人の手を引いて案内するタスクのデモンストレーションを披露した.このデモンストレーションでは,ロボットが人の手を取る際に,触覚センサから得られた感覚情報をもとに,適切な強さで手を握る制御をレザバーで行い,ロボットの身体から得られた個々の情報の適切な処理方法を示した.このデモンストレーションは当大会においてTechnical Challenge賞を受賞した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画通り,2021年度はロボットの身体から得られる個々の情報を記憶し,想起する機能をもつAIモデルの考案に取り組み,レザバーによる感覚情報の記憶機能を実現した.また,研究成果報告として,ジャーナル論文一報と国際会議一報の発表があり,一件の特許出願も行った.ロボット人の手を引いて案内するデモンストレーションは2022年度に取り組む計画であったが,既に2021年度中に部分的に(当初想定したより難易度が低いタスクを実施した)達成した.さらに,ナノ材料によるレザバーデバイスの研究も本研究課題と並行して進んでおり,これに関する共著論文(Advanced Materials)も掲載された.2022年度はAIモデルのハードウェア化に取り組む計画であるが,このレザバーデバイスをすぐに活用できる準備ができている.
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は,高速・低消費電力化を目指してAIモデルのハードウェア化に取り組む.特にナノ材料によるレザバーデバイスを活用し,2021年度に取り組んだ記憶・想起の機能を実現可能かどうか模索する.また,時定数の異なる複数のレザバーを組み合わせる方法についても,上記レザバーデバイスで実現可能か模索する. 2021年度にRoboCup@Homeで実施したロボットが人の手を引いて案内するタスクの拡充を行う.現状はロボットアームを固定した状態で,人の動きに合わせて(触覚センサから得られた情報に応じて)手を握る強さを調整するのみであるが,これを人の動きに合わせて手を握る強さだけでなく,アーム全体や移動台車を含めた制御を行い,より複雑な動作生成に挑戦する.
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