研究課題/領域番号 |
21K21319
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
川原 僚 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 助教 (80911263)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | コンピュータビジョン / コンピュテーショナルフォトグラフィ / 3次元形状復元 / 水中撮影 / 光線空間 / 偏光解析 |
研究実績の概要 |
研究目的: 本研究の目的は,多領域光線空間のモデル化による水中物体の3次元形状復元である.水中環境における屈折・散乱・吸収といった現象を含む視覚世界を解き明かす手がかりとして,近赤外光および偏光の観測情報を光線空間の枠組みに導入する.さらに,光線空間の表現を物体内部(媒質間の変換)へと拡張した多領域光線空間のモデル化およびその解析による水中物体の詳細な3次元形状復元手法までを明らかにする.よって具体的には,海中等に潜水して水中物体撮影を行うのではなく,等価な環境として,空気中に光源およびカメラを設置し,水槽中に被写体が存在する環境において手法の有効性の実証に注力する.
令和3年度の実施計画及び内容: 能動偏光光源,および偏光カメラからなる計測系において水槽中の被写体へと照射・観測される多領域光線空間をモデル化し,さらに多領域光線空間同士の変換関係と,その解析法の理論的検討に注力した.具体的には,偏光情報を含む光線を記述するためにプリュッカー座標系をミュラー行列およびジョーンズ行列に対して拡張し,多領域光線空間同士の変換関係を記述した.さらに,その変換関係を用いたキャリブレーション法及び被写体の形状復元法を考案した.これらは,コンピュータビジョンにおけるこれまでの幾何変換を拡張する新たな枠組みである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り主に理論的検討に注力した.多領域光線空間のモデル化および変換関係について,ミュラー行列の拡張のみでなく幾何変換においてはジョーンズ行列による線形変換も有用であるという着想に基づき理論的検討を行うことができている.また,偏光光源としてプロジェクタの利用を想定していたが,理論的検討を重ねた結果,LCDディスプレイの利用が有望であることが明らかになったため,撮像系の細部に変更があったものの予定通りキャリブレーション法および計測手法の考案を行うことができている.
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今後の研究の推進方策 |
今後は手法の有効性の実証を行う.具体的には,キャリブレーションおよび被写体の3次元形状復元手法の有効性を,シミュレーション実験および実画像実験によって行う.ただし,被写体についてはまず半透明物体ではなく水中の透明物体や不透明物体とし,段階的に研究を推進していく.
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次年度使用額が生じた理由 |
情報収集を目的とした国内研究会はオンライン・現地のハイブリッド開催を想定して計上していたが,オンライン開催となったため使用額の差額が生じている.また,「現在までの進捗状況」に記述した通り,LCDディスプレイの準備が必要であるが,その他については計画通りに使用する予定である.
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