研究目的: 本研究の目的は,多領域光線空間のモデル化による水中物体の3次元形状復元である.水中環境における屈折・散乱・吸収といった現象を含む視覚世界を解き明かす手がかりとして,近赤外光および偏光の観測情報を光線空間の枠組みに導入する.さらに,光線空間の表現を物体内部(媒質間の変換)へと拡張した多領域光線空間のモデル化およびその解析による水中物体の詳細な3次元形状復元手法までを明らかにする.よって具体的には,海中等に潜水して水中物体撮影を行うのではなく,等価な環境として,空気中に光源およびカメラを設置し,水槽中に被写体が存在する環境において手法の有効性の実証に注力する.
令和4年度の実施計画及び内容: 前年度に理論的検討を行った多領域光線空間の解析による撮像系のキャリブレーション手法,および被写体の3次元計測手法の有効性を実証をシミュレーション実験,および実画像実験を通して定性的・定量的に評価した.特に実画像実験に関して,具体的には,まず能動偏光光源としての液晶ディスプレイ,およびカラー偏光カメラを用いて,水槽中の被写体に対して偏光を照射・観測する計測装置を構築した.次に考案した撮像系のキャリブレーションを行い,さらに照射・観測された多領域光線空間を解析することで,水中物体の3次元形状(奥行き・表面法線)を復元することで提案手法の有効性を実証した.また,これらの研究成果の一部をとりまとめ,国際会議において成果発表および議論を行った.
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