研究課題/領域番号 |
21K21325
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
大澤 友紀子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究員 (80909200)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 接触認識 / 伝熱 / 熱物性 / 制御システム / システム統合 |
研究実績の概要 |
本研究は、人間の温熱感覚が担う「接触物の認識」をロボットに実現させるための技術確立を目的とする。接触対象物の熱物性を温度に依らず抽出するため、ロボット表面と接触物の温度差を能動的に作り出す温度制御機能をロボットの手先に搭載し、温度制御系一体型の認識アルゴリズムについて検討する。 今年度の実施内容として、まずロボットグリッパー外装の開発を行った。接触表面の熱伝達や把持動作中の温度計測などに配慮したデザイン設計により、材料認識に適した温度情報を取得するための外装プロトタイプの開発に成功した。また卓上小型ロボットと水流による温度制御システムを統合した実験セットアップを構築し、接触物体間の温度差を変化させた際(グリッパー表表面または対象物を温熱・冷却)の、金属と木材ブロックの温度情報に基づく分類実験を行った。本実験により、接触物体間の温度差が分類精度に与える影響を明確化した。またグリッパー表面の温度制御により接触物体間に10度以上の温度差を作り出すことで、機械学習による高精度な分類を達成した。特に、従来のヒーターを用いた温度計測技術では認識しにくい熱された物体に対しても、ロボットグリッパーを冷却することにより分類を行うことが可能となった。 さらに産業応用を見据え協働ロボットアームに取り付けられたグリッパーに装着する外装の開発を行い、温度差に加え接触圧力の影響を考慮した材料認識についても検討を行った。また協働ロボットを用いて接触対象の把持を行い、金属(銅/アルミ/真鍮/亜鉛/鉄)と木材ブロックについての識別精度を検証した。 本年度得られた知見は、触覚センサ等では分類の難しい固さ・表面粗さに大きな違いがない接触対象に対し、熱物性の違いを利用した材料識別技術の有効性、有用性、また精度向上による技術発展性を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は本課題開始時に計画していた、接触対象物の認識のためのロボット外装のデザインについて検討を行った。当初計画されていたプロトタイプ開発に加え、材料の異なるブロックの識別について実験を行い、提案する外装デザインが実現する機能について有効性を示した。さらに産業用ロボットに取り付けるための外装についても開発を行い、接触圧力の変化による識別精度の影響についても検討を行った。これにより識別精度を高める接触温度・圧力の条件について新たな知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
来年度はロボットマニピュレータを用いた工場での仕分けといった、具体的なアプリケーションを想定したデモンストレーション実験を行う予定である。それに伴い、本年度十分に検討できなかった接触時の温度・圧力分布についても考慮した理論の構築を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
少額の残金(326円)について単体では必要経費として用いることができなかったため、来年度の経費と合わせて金額の大きい物(温度制御装置など)の購入のための経費に充てたいと思う。
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