近年、生活者との長期的な共創を通じてサービスをデザインする「リビングラボ(LL)」が高い注目を集めている。しかしながら、LLを効果的に進めるための知見(実践知)は殆ど整理されておらず、企業や行政などのLL実践者は、“拠り所”となる知見や手法がないまま、場当たり的にLLプロジェクトの設計や運営を行っていることが多い。そこで本研究では、実践知を活用してLLプロジェクトの設計を行うための汎用的な手法を開発することを目的とする。 これに対して、初年度は、LLの実践知(LLの効果的な進め方に関する知識)の収集・整理を行い、LLの実践知の知識構造を構築することに成功した。最終年度は、初年度に構築した知識構造をもとに、2つの具体的な支援ツールを開発した。ひとつは、LLにおける市民(ユーザ)の参加プロセスを計画・設計するためのツール(Participation Blueprint)である。もう一つは、LLプロジェクトの設計(アセスメントにもとづくプランニング) を支援するためのセルフアセスメントツールである。Participation Blueprintについては、LLプロジェクト実践者を支援するためのフレームワークを作成し、実際のLLプロジェクトにおけるユーザ参加プロセスの振り返りや分析に適用し、その有用性を確認した。さらに、その成果である論文は、査読付国際誌Design Scienceに採択・掲載された。一方、セルフセスメントツールについても、チェックリストツールを開発し、複数のLLプロジェクトのセルフアセスメントに活用した。その結果、本ツールがLLプロジェクトの戦略的なプランニングに有用であることなどを確認できた。本成果は、査読付国際誌に論文として投稿済みである(現在審査中)。
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