本研究では,もみ殻を熱処理することで得られるもみ殻炭(非晶質Cおよび酸化ケイ素(SiOx)の複合材)を,Liイオン電池負極の活物質に応用することを目指した。熱および化学的な材料加工条件を様々に設定することで,物性の異なるもみ殻炭を製造し,それらを負極に用いたLiイオン電池の充放電特性を評価した。その結果,もみ殻炭において,SiOxは除かすにCと共存させることで,そのLiイオン電池は優れた充放電性能を示した。 2021年度は,もみ殻炭の製造とLiイオン電池への適用に焦点を当て,製造したもみ殻炭の物性および電気化学特性の評価を行った。もみ殻炭の製造時に,NaOH水溶液への浸漬により,もみ殻炭中のSiOxを除去し,Liイオン電池の充放電特性におけるSiOxの役割を調査した。SiOxを除去しないもみ殻炭およびSiOx含有量の異なるもみ殻炭を用意し,それらを用いるLiイオン電池の充放電特性を評価した。その結果,もみ殻炭におけるSiOxは,充放電時の比容量を高め,電流レート特性が改善されることを示した。また,もみ殻炭をLiイオン電池負極に応用するためには,電池組立前にLiイオンのプレドープを実施する必要があると判った。 2022年度は,Liイオン電池に関するLiイオンプレドープ技術について調査した。CとSiの複合材を用意し,Liイオンプレドープ時のプレドープ量(mAh/g)を変化させ,その負極を用いるLiイオン電池の充放電特性への影響を明らかにした。もみ殻炭や非晶質CとSiの複合材のような,初回充電時にLiイオンを多量に消費する活物質は,Liイオンのプレドープによって,Liイオンの消費分を補償し,Liイオン電池を良好に充放電させた。また,使用する活物質のLiイオン挿入脱離比容量を基準に,過度なLiイオンプレドープを行うと,長期充放電サイクルでも性能劣化を抑制できることが示された。
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