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2022 年度 実施状況報告書

自然炎症に起因する心不全発症進展メカニズムの解明と治療標的の同定

研究課題

研究課題/領域番号 21K21350
研究機関国立研究開発法人国立循環器病研究センター

研究代表者

大宮 茂幹  国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 部長 (40920260)

研究期間 (年度) 2022-02-18 – 2025-03-31
キーワード自然炎症 / 心不全 / ミトコンドリアDNA / メチル化 / サイトカイン
研究実績の概要

本研究課題においては、以下に示す4つの仮説I)、II)、III)およびIV)を証明する。
I) ミトコンドリアDNA (mtDNA) のメチル化が転写レベルや心臓における炎症反応の程度に影響を与える。II) Deoxyribonuclease II (DNase II) によるmtDNAの分解が心不全の発症および進展を抑制する。III) Tristetraprolin (TTP) によるサイトカインmRNAの分解は心不全の発症進展を抑制する。IV) NLRP3インフラマソームは心不全の発症および進展に関与する。
I)について、心臓リモデリング中に心筋細胞内のmtDNAがメチル化されるか検討するため、野生型マウスの大動脈縮窄術 (TAC) による圧負荷または左冠動脈結索による心筋梗塞 (MI) モデルの心臓サンプルを、それぞれのShamサンプルと共に収集した。TACは術後1週および4週に、MIは術後3日および2週にサンプルを収集した。mtDNAのメチル化につきバイサルファイトシークエンス法にて検討する。mtDNA methyltransferase (DNMT) 1(mtDNMT1)欠損マウスは繁殖を進めている。
II)につき心筋細胞特異的DNase II過剰発現マウスを、III)につき心筋細胞特異的TTP欠損マウスをTACに供したところ、野生型マウスに比して前者は心エコー上心拡大や心機能低下の程度が抑制されていたが、後者はそれらが悪化していた。生化学的および組織学的手法で両マウスの表現型の確定を要する。
IV) 心筋細胞特異的NLRP3欠損マウスを繁殖させている。心臓においては線維芽細胞におけるNLRP3の発現量は心筋細胞に比して多いことから、心臓線維芽細胞特異的NLRP3欠損マウスも作製して繁殖をすすめている。並行して両マウスをTACに供与して表現型を検討している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

I)において、野生型マウスの圧負荷心不全モデルおよび心筋梗塞モデルから不全心サンプルの収集を完了している。また、mtDNMT1欠損マウスは繁殖中である。総じて順調に進展している。
II)、 III)においてはそれぞれの遺伝子改変マウスの心不全モデルにおける表現型が、野生型マウスに比して心エコー上で有意に異なることを認めている。標的分子DNase IIおよびTTPが心不全発症進展メカニズムにおいて重要な役割を果たしていることが示唆されており、進捗状況としては順調である。
IV)に関しては心筋細胞特異的NLRP3マウスおよび心臓線維芽細胞特異的NLRP3欠損マウスの繁殖並びに心不全モデルへの供与を開始している。心臓におけるNLRP3の役割を包括的に理解する一助となるものと思われる。進捗状況としては順調に進展している。

今後の研究の推進方策

前述の仮説I)からIV)について以下に示すように研究を推進する。I) 野生型マウス不全心においてメチル化が生じているかバイサルファイトシークエンス法で検討する。また、mtDNMT1欠損マウスにTACを施し、表現型を野生型マウスと比較する。具体的には心エコーによる心拡大および心機能低下の程度、心臓および肺重量、quantitative PCR (qPCR) によるNppb mRNAレベル、組織染色によるコラーゲン沈着レベルなどを評価する。さらに、野生型マウスおよびmtDNMT1欠損マウス不全心においてmtDNAの転写活性に差を認めるかどうか,qPCRにて各mtDNA由来のmRNA発現レベルを評価する。II) 心筋細胞特異的DNase II過剰発現マウスの不全心をI)で示した生化学および組織学的手法で解析し、心不全モデルにおける同マウスの表現型を確定する。III) 心筋細胞特異的TTP欠損マウスの不全心をI)で示したように解析し、心不全モデルにおける同マウスの表現型を確定する。IV) 心筋細胞特異的または心臓線維芽細胞特異的NLRP3欠損マウスのTACによる心不全モデルにおける表現型を、I)と同様に解析して表現型を確定する。
いずれの遺伝子改変マウスにおいても野生型マウスと比較して表現型に有意な差を認めた場合、qPCRによるサイトカインmRNAの発現レベルや免疫組織染色による炎症細胞の浸潤レベルを評価する。

次年度使用額が生じた理由

本研究課題においてマウス不全心における炎症性サイトカインのmRNAの発現レベルは、自然炎症反応が心不全発症進展メカニズムにどのように寄与するかを考察するうえで重要な指標となるものである。そのため、マウス不全心から良質なRNAを抽出する必要がある。一般的に心臓のような線維組織、脳のような脂肪組織および脾臓のようなヌクレアーゼ活性の高い組織からRNAを抽出した場合、純度が低くなる場合がある。これまで、市販のRNA抽出用キットを用いて高純度のRNA抽出をめざしてきたが、サンプル間または研究者間で純度にばらつきを認めることがあった。2023年2月、それらを克服するために自動核酸抽出・精製装置を試験的に使用したところ、研究者間でばらつきのない、高純度でインタクトなRNAを短時間で効率的に抽出できることを確認し得た。今後の研究を高度なクオリティーで加速度的に推進させるため、核酸自動精製システムを導入することとした。そのような装置は高額機器であるため、国立循環器病研究センター内の規定により、入札を行うこと、また、機種選定のために同等機種の比較を行うことが必須であった。それゆえ、令和4年度内にあらゆる手続きを済ませて自動核酸抽出・精製装置を納入することができなかった。その購入費用および関連する消耗品費を確保したため、次年度使用額が生じた。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)

  • [国際共同研究] King's College London(英国)

    • 国名
      英国
    • 外国機関名
      King's College London
  • [雑誌論文] Rubicon-regulated beta-1 adrenergic receptor recycling protects the heart from pressure overload2022

    • 著者名/発表者名
      Akazawa Yasuhiro、Taneike Manabu、Ueda Hiromichi、Kitazume-Taneike Rika、Murakawa Tomokazu、Sugihara Ryuta、Yorifuji Hiroki、Nishida Hiroki、Mine Kentaro、Hioki Ayana、Omiya Shigemiki、Nakayama Hiroyuki、Yamaguchi Osamu、Yoshimori Tamotsu、Sakata Yasushi、Otsu Kinya
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 12 ページ: -

    • DOI

      10.1038/s41598-021-03920-6

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] Sustained Increase in Cytokine mRNA in Cardiomyocytes Contributes to Cardiomyocyte Death and Inflammation in the Development of Heart Failure2023

    • 著者名/発表者名
      大宮茂幹
    • 学会等名
      第87回日本循環器学会学術集会
    • 国際学会

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公開日: 2023-12-25  

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