研究課題/領域番号 |
21K21350
|
研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
大宮 茂幹 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 部長 (40920260)
|
研究期間 (年度) |
2022-02-18 – 2025-03-31
|
キーワード | 自然炎症 / 心不全 / ミトコンドリアDNA / メチル化 / サイトカイン / インフラマソーム / 心筋細胞 / 心臓線維芽細胞 |
研究実績の概要 |
心臓における mtDNAのDNA methyltransferase1 (DNMT1) によるメチル化 [1] や DNase IIによるmtDNAの分解機構 [2] 、Tristetraprolin (TTP) および Nucleotide-binding domain, leucin-rich repeat containing protein 3 (NLRP3) インフラマソームによる炎症性サイトカインの発現制御機構 [3, 4] が心不全の病態形成に寄与するかどうかを明らかにする。 [1] 横行大動脈縮窄術 (TAC) による圧負荷誘導性の、または左冠動脈結索による心筋梗塞後の心不全モデルマウスの心臓検体におけるmtDNAのメチル化をバイサルファイトシークエンス法にて解析している。また、mtDNMT1 欠損マウスをTACに供与して心機能の解析を進めている。 [2] TACに供与した心筋細胞特異的 DNase II 過剰発現マウスの心機能は、野生型マウスと比較して良好であった。生化学的および組織学的な検討においてもそれを支持する結果を得た。 [3] 心筋細胞特異的TTP欠損マウスをTACに供したところ、野生型マウスに比して心機能低下を示すものの軽微な差であったため、再現性を確認中である。 [4] 心筋細胞特異的NLRP3欠損マウスをTACに供与し、心臓の表現型解析を試みている。また、心臓線維芽細胞特異的NLRP3欠損マウスを用いて同様の実験を行ったが、野生型マウスに比して心機能低下は抑制され、心肥大や心臓線維化なども軽度であった。NLRP3欠損マウスから採取した心臓線維芽細胞を用いて同細胞におけるNLRP3インフラマソームの活性化機構をin vitroにて解析を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
[1] mtDNAのメチル化の有無およびmtDNMT1欠損マウスの心不全モデルにおける表現型の解析が完了していない。 [2] DNase IIが血行動態的ストレスに対して心臓保護的な役割を担う事を明らかにした。 [3] 心筋細胞特異的TTP欠損マウスの心不全モデルにおける表現型が再現性のあるものか確定できていない。 [4] 心臓線維芽細胞におけるNLRP3は心臓への圧負荷刺激による心不全の病態形成に寄与することを示した。心筋細胞内のNLRP3の役割は明らかではない。 マウスの繁殖や飼育に想定外に時間を要し、心不全モデルマウスを用いたin vivo実験やマウス心から単離した細胞を用いた in vitro 実験の実施が遅れた。 研究課題[2]は進捗状況としては順調であるが、他が遅れているため、総合的に“やや遅れている”と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
[1] 野生型マウス不全心において mtDNA のメチル化が生じているかバイサルファイトシークエンス法で解析を完了する。また、TACに供与した mtDNMT1 欠損マウスの表現型を野生型マウスと比較し、確定する。 [2] TACに供された心筋細胞特異的 DNase II 過剰発現マウスのDNaseII活性をthe single radial enzyme-diffusion methodにて野生型マウスと比較評価する。また、DNase II を制御する分子メカニズムの解明に取り組む。 [3] 心筋細胞特異的TTP欠損マウスのTACによる表現型を確定する。 [4] 心筋細胞特異的NLRP3欠損マウスのTACによる心不全モデルにおける表現型を確定する。心臓線維芽細胞におけるNLRP3活性化機構の解明に取り組む。 いずれの遺伝子改変マウスにおいても野生型マウスと比較して表現型に有意な差を認めたものは、qPCRによるサイトカインmRNAの発現レベルや免疫組織染色による炎症細胞の浸潤レベルを評価する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
マウスの繁殖が予定通りに進まなかったため、予定よりも動物飼育に費やす研究費が少なくなった。実験に用いるマウスを十分確保できなかったため、in vivo実験に要する物品の購入も控えることとなった。 次年度に行う動物飼育やin vivo実験に要する費用として、繰り越した研究費を使用する。
|