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2022 年度 実施状況報告書

ヴェーダ文献における言語層の考察とそれを利用した文献年代推定プログラムの開発

研究課題

研究課題/領域番号 21KK0004
研究機関京都大学

研究代表者

天野 恭子  京都大学, 文学研究科, 京都大学人文学連携研究者 (80343250)

研究分担者 宮川 創  大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 研究系, 助教 (40887345)
夏川 浩明  大阪成蹊大学, 教育学部, 准教授 (90712951)
横地 優子  京都大学, 文学研究科, 教授 (30230650)
研究期間 (年度) 2021-10-07 – 2027-03-31
キーワード古代インド / ヴェーダ / 年代推定 / データベース / サンスクリット / 言語分析 / XMLデータ / 情報可視化
研究実績の概要

本研究では、古代インドにおいて紀元前15世紀から5世紀に亘って多くの文献を成立させたヴェーダを対象とする。これらの文献の語彙・統語論分析を行い、ヴェーダ文献の言語の変遷を考察する。その考察から、ヴェーダ文献の年代を推定するプログラムを完成することが目的である。本研究は、1)ヴェーダ文献の言語層の考察、2)言語層の考察を利用して年代推定プログラムを開発する、年代推定の結果を評価しフィードバックを行う、3)ヴェーダ文献の時空間的変遷についてデータ可視化する、ことからなる。1)は天野、宮川、夏川、横地、2)は国際共同研究の相手であるHellwigおよび天野、3)の可視データ作成は、天野と夏川で担当する。本研究は、Hellwigの率いる、2021-2023年度ドイツ研究教育省
Digital Huamanitiesプロジェクト「ChromBMM」と協働する。
2022年度は、1)ヴェーダ文献の言語層の考察として、前年度から引き続き行っている、ヴェーダ文献に現れるマントラの共起関係を元にした文献相関関係の考察、語彙・文体分析ツールを用いた、文献の内部構造および文献間関係の考察を進めた。マントラ共起関係から得られる考察について2つの発表を行った。語彙・文体分析については、データが未完成で文献の全体に及んでいないことから、最終的な成果は出せていないが、どの分析が有効であるかの方法論の検討を進めることができた。
2)については、Hellwigのプロジェクトが出しつつある成果について、Hellwig, プロジェクトのメンバーであるSven Sellmerと、天野とで、議論を行った。年代推定に有用な文体の分類を加えることを天野から提案し、今後データに加えることとなった。
3)については、文献の内部構造について研究者が頭に描く図をそのまま可視化できるようなヴィジュアルについて協議を重ね、開発に着手した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

1)のヴェーダ文献の言語層の考察には、いくつもの視点・方法が含まれる。従来の文献学的手法、人文情報学的なデジタルツール、特に自然言語処理を利用した分析、既存のインデックス等を用いた分析などである。デジタルツールによる分析は、既存のツールをサンスクリット語の分析に利用できるよう、サンスクリット語やヴェーダ文献の特有の問題を解決することが課題であったが、前身のプロジェクト(2020年)からの知見の蓄積により、問題のありかがメンバーの間で確認できてきたことにより、分析の評価や計画を、適切に行えるようになった。また、デジタルヒューマニティー分野の目覚ましい発展により、同様の関心を持った研究者との情報交換が進んでいることも、良好な進捗に寄与している。
2)の、年代推定プログラムについては、Hellwigによる開発の状況が良好であり、すでに現状のプログラムによる結果が出ている。フィードバックによる改良の余地はまだまだあるが、予想以上に早い進展であると言える。年代推定プログラムの改良のための、これまでに取り入れられていなかった文体の分類についての天野の提言について、Hellwigの同意が得られ、その分類が新たにデータに取り入れられる見通しも悪くないことは、良好な進展であると言える。
3)のヴィジュアライゼーションでは、これまでに開発してきたマントラ共起関係による文献間関係の可視化システムが、様々なフィードバックを反映させて、使用者のニーズに応えた様々な機能を実装し完成したことが、大きな成果と言える。また、文献の内部構造を細かく表すことのできる新たな可視化システムについて、これまでは計画が具体化しなかったが、本年度に具体的な方針を策定することができ、開発への一歩を踏み出すことができたのは、大きな成果である。

今後の研究の推進方策

1)の言語層の考察については、これまでに進めてきた分析ツールの試行の評価について、国際学会での発表を予定している。京極、宮川が担当する。本研究については試行段階であるので、この評価を踏まえより有効な分析を発展させる。このパートでは、隔月でオンラインミーティングを行う。分析の元となるデータ作成は、時間がかかるものの順調に進めており、2023年度中にはまとまったデータを母体とした分析を行うよう計画している。また、既存のインデックスを用いたマントラ共起関係による文献間関係の可視化システムについては、夏川と天野が発表を行い、一般への公開を促進する。システムを利用する研究者が増え、多くの考察が生み出されることを目的として、発信を続ける。
2)の年代推定については、現状での成果についてHellwigと議論を進める。8月にドイツで、2024年3月に日本で、ワークショップを行い、集中的に議論できる場を作る予定である。
3)の可視化システムの発展については、夏川と天野で隔月のミーティングを行う。2023年度の前半には、文献内部構造可視化システムの試作を完成させ、年度内にアウトラインについて発表したい。また、文献の内部構造のヴィジュアルと、文献間の関係性を表すヴィジュアルに連結させるグラフについて、構想を作成する。
以上のように、研究がそれぞれのパートで発展を見せているが、近年の情報学および人文情報学の分野への注目も相まり、研究の波及効果(興味を持つ人、影響を受けるであろう人の数)が増大していると考えられる。サンスクリット語文献の分野で人文情報学の手法を用いる新たなプロジェクトも発足し(基盤B「デーヴァナーガリー文字OCRの実用化と文献データベースの利活用にむけた応用研究」研究代表者:加藤隆宏)、今後協力して研究を進める。来年3月に日本でワークショップを開催し、関連研究者と意見交換を進めたい。

次年度使用額が生じた理由

次年度使用額が生じた理由の1つは、ドイツでOliver Hellwigと行う共同研究に、天野の他に宮川、夏川も参加予定であったが、Hellwigと天野の共同研究をベルリンで、その後、宮川、夏川、天野のミーティングを東京で行ったため、予定していた費用との差が生じた。
もう1つの理由は、本年度のアルバイトの作業およびミーティングの場所として、所属大学にスペースを借りたが、その費用が想定よりも抑えられたことである。
次年度は、8月のドイツでの共同研究の他、2024年3月に日本でワークショップを開催することとなった。これは、本研究が想定よりも進捗したことと、近年の人文情報学分野での興味の高まりと技術の発展が急激であることにより、急遽計画したものである。生じた次年度使用額は、このワークショップの開催にあてることを予定している。

備考

上記ウェブサイトは、本プロジェクトの前身となる京都大学研究支援のプロジェクトのサイトであるが、本研究のwebページとして近日リニューアルする予定である。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] Dusseldorf University/Leipzig University(ドイツ)

    • 国名
      ドイツ
    • 外国機関名
      Dusseldorf University/Leipzig University
  • [雑誌論文] etad va esabhyanukta in the Maitrayani Samhita. The Beginning of Didactical Verse Embedded in Narrative Prose2023

    • 著者名/発表者名
      Kyoko Amano
    • 雑誌名

      Journal of Indological Studies

      巻: 34-35 ページ: 1-13

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The Vedic corpus as a graph. An updated version of Bloomfield's Vedic Concordance2023

    • 著者名/発表者名
      Oliver Hellwig, Sven Sellmer, Kyoko Amano
    • 雑誌名

      Proceedings of the 18th World Sanskrit Conference 2023. 9-13 January 2023

      巻: - ページ: -

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Interconnecting Glimpses of Vratya Culture in Ancient India2022

    • 著者名/発表者名
      Amano Kyoko
    • 雑誌名

      Orientalistische Literaturzeitung

      巻: 117 ページ: 91~97

    • DOI

      10.1515/olzg-2022-0034

    • 査読あり
  • [学会発表] Visualization of the relationship among Vedic texts and observation of the development of Yajurveda texts2023

    • 著者名/発表者名
      Kyoko Amano, Hiroaki Natsukawa
    • 学会等名
      A Three Day International Seminar on Paninian Grammar & its Applications 13-15 February 2023
    • 招待講演
  • [学会発表] The Vedic corpus as a graph. An updated version of Bloomfield's Vedic Concordance2023

    • 著者名/発表者名
      Oliver Hellwig, Sven Sellmer, Kyoko Amano
    • 学会等名
      The 18th World Sanskrit Conference 2023. 9-13 January 2023
    • 国際学会
  • [学会発表] Apri verses and prayajas in the Maitrayani Samhita, and their relationship to the Rgveda khila Special Panel2023

    • 著者名/発表者名
      Kyoko Amano
    • 学会等名
      The 18th World Sanskrit Conference 2023. 9-13 January 2023
    • 国際学会
  • [学会発表] History of Prayaja / Anuyaja `Preliminary / Concluding Worship' and Apri Hymn in Vedic Ritual2022

    • 著者名/発表者名
      Kyoko Amano
    • 学会等名
      Der 34. Deutsche Orientalistentag. 12-17 September 2022
    • 国際学会
  • [備考] データ駆動型科学が解き明かす古代インド文献の時空間的特徴

    • URL

      https://ancientindia-datascience.jp/

URL: 

公開日: 2023-12-25  

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