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2022 年度 実施状況報告書

国際協働による西アジア先史時代における交易品の産地同定と交易ネットワークの解明

研究課題

研究課題/領域番号 21KK0008
研究機関筑波大学

研究代表者

前田 修  筑波大学, 人文社会系, 准教授 (20647060)

研究分担者 千本 真生  (財)古代オリエント博物館, 研究部, 研究員 (10772105)
黒澤 正紀  筑波大学, 生命環境系, 准教授 (50272141)
有村 誠  東海大学, 文学部, 教授 (90450212)
研究期間 (年度) 2021-10-07 – 2026-03-31
キーワード考古学 / 西アジア / 交易 / 黒曜石 / ビチュメン
研究実績の概要

本課題では、考古学的手法による一次資料の分析によって、西アジアの先史時代における交易ネットワークの発達と社会発展の関連性を実証することを目指している。
研究方法として、(1) 西アジア各地の遺跡から出土する黒曜石・ビチュメン(アスファルト)・土器の原産地を理化学的分析手法によって同定し、(2) これらの物資の遠距離交易ネットワークの実態とその時間的変遷を考察することで、この時代の交易活動が果たした社会的・経済的役割をあきらかにすることを目標としている。マンチェスター大学での機器分析とアルメニア共和国でのフィールド調査を中心に、5年間の研究を実施する計画である。
2022年度の研究においては、夏季にイラク・クルディスタン地域シャフリゾール平原においてフィールドワークを実施し、新石器時代遺跡の発掘調査をおこなうことで黒曜石製石器資料およびビチュメンが付着した土器資料を入手することができた。また、調査期間中に近隣のビチュメン産出地であるBashi Pirq地区で踏査をおこない、天然に湧出しているビチュメンを確認するとともに、産地資料を採取することに成功した。今後のビチュメン産地同定のための貴重なデータとなる。
発掘調査で出土した黒曜石については、共同研究者であるマンチェスター大学のスチュアート・キャンベルらとともに携帯型蛍光X線分析装置を用いて産地同定分析をおこない、南東アナトリアの産地であるビンギョル、ネムルート・ダー、メイダン・ダーの黒曜石が、産地から500キロメートル近く離れたシャフリゾール平原に運ばれたことがあきらかになり、新石器時代の物資交易ネットワークを解明するための重要なデータとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の研究計画通り、イラク・クルディスタン地域でのフィールド調査を2022年度に実施することができ、研究に必要な考古資料を十分に入手することができている。
また、昨年度は新型コロナウイルス感染症の影響による海外渡航の規制のため、イギリスに渡航してマンチェスター大学の共同研究者と黒曜石分析を実施する予定を延期することになったが、2022年度には、マンチェスター大学の研究者が2023年2月に来日し、2021年度から延期していた研究の打ち合わせをおこなうとともに、携帯型蛍光X線分析装置を用いた黒曜石資料の産地同定分析を実施することができた。フィールド調査から得られた筑波大学収蔵の黒曜石製石器のほか、東京大学総合研究博物館収蔵資料を分析するとともに、研究分担者の有村が東海大学に保管するアルメニアの遺跡から出土した黒曜石製石器、おなじく研究分担者の千本が所属する古代オリエント博物館が所蔵するイラクの黒曜石製石器を分析した。合計で約1500点の資料を分析することができ、極めて有意義なデータベースを構築することに成功している。
さらに土器の胎土分析に関しては、研究分担者の有村がアルメニアで入手した黒曜石粒を胎土に含む土器の胎土分析を開始している。研究分担者の黒澤と千本が薄片試料を作成し、SEM-EDSによる分析を進めている。
ここまで、研究期間1年目、2年目の計画は順調に進んでいるといえる。

今後の研究の推進方策

2023年度も引き続きイラク・クルディスタン地域でのフィールドワークをおこなうとともに、黒曜石資料、ビチュメン資料、土器資料の分析を進展させる。
黒曜石資料の分析は、イギリスに渡航し、マンチェスター大学において実施する。1週間程度の渡英を予定している。また、2023年度中に、アルメニア科学アカデミーの研究者らとともにアルメニア共和国でフィールド調査を実施して原産地黒曜石資料を入手し、それらをさらにマンチェスター大学で分析する。
ビチュメンの分析に関しては、これまでの分析結果を論文としてまとめ、研究成果を公表することを第一に進める。その後、これまでの研究成果をもとに分析方法を洗練させ、新たな資料の分析を開始する。
土器分析に関しては、今年度に入手した黒曜石を混和剤に含むアルメニアの土器資料の分析を進める。胎土に含まれる黒曜石の産地同定、その他の鉱物の産地を分析するとともに、土器の焼成温度をあきらかにする。
それぞれの分析結果は論文としてまとめ、順次、英文ジャーナルに投稿する。

次年度使用額が生じた理由

2021年度において、新型コロナウイルス感染症の蔓延により、予定していたイギリスへの海外出張ができなかったことから、予算の使用が2022年度にずれ込んでいた。2022年度は、当初は研究代表者がイギリス・マンチェスターを訪れ共同研究者と黒曜石の分析をおこなう予定であったが、代わりに共同研究者が来日して日本で分析をおこなうことになった。本課題によるフィールドワークで出土した資料だけでなく、日本の研究機関に収蔵される黒曜石資料を合わせて分析することにしたためである。そのため、2022年度に使用予定であった海外渡航費用は、2023年度に使用することとし、2023年度中にマンチェスター大学へ渡航する費用に充てることとした。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] マンチェスター大学(英国)

    • 国名
      英国
    • 外国機関名
      マンチェスター大学
  • [雑誌論文] Excavations at Shaikh Marif, Iraqi Kurdistan preliminary report of the first season (2022)2023

    • 著者名/発表者名
      Odaka, T. Maeda, O., Miki, T., Hayakawa, Y.S, Yewer, P. and Gharib, H.H.
    • 雑誌名

      Ancient Civilizations and Cultural Resources

      巻: 1 ページ: 1-22

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] イラク北東部鉄器時代遺跡の製鉄関連スラグ2023

    • 著者名/発表者名
      黒澤正紀・西山伸一・池端慶
    • 雑誌名

      都市文明の本質-古代西アジアにおける都市の発生と変容の学際研究

      巻: - ページ: 131-146

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] Change and Continuity in the Lithic Industry of Hasankeyf Hoyuk, a Late 10th Millennium cal. BC Site on the Upper Tigris.2022

    • 著者名/発表者名
      Maeda, O., Carter T. and Moir, R.
    • 雑誌名

      Tracking the Neolithic in the Near East. Lithic Perspectives on Its Origins, Development and Dispersal

      巻: - ページ: 453-468

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Determination of hydrogen concentration in solids by transmission ERDA under nuclear-elastically enhanced recoiling of H by 8 and 9 MeV He2022

    • 著者名/発表者名
      Kudo, H., Kurosawa, M., Naramoto, H., Sataka, M., Ishii, S., Sasa, K., and Tomita, S.
    • 雑誌名

      Journal of Physics: Condensed Matter

      巻: 34 ページ: 435902

    • DOI

      10.1088/1361-648X/ac8b4e

    • 査読あり
  • [学会発表] 60 years of obsidian sourcing: Legacy data and issues of compatibility and curation2022

    • 著者名/発表者名
      Campbell, S., Healey, E., Maeda, O.
    • 学会等名
      The 10th International Conference of the Pre-Pottery Neolithic Chipped and Ground Stone Industries of the Near East
    • 国際学会
  • [学会発表] Another lithic tradition in the Pottery Neolithic of the Eastern Fertile Crescent?2022

    • 著者名/発表者名
      Maeda, O.
    • 学会等名
      The 10th International Conference of the Pre-Pottery Neolithic Chipped and Ground Stone Industries of the Near East
    • 国際学会
  • [図書] Tracking the Neolithic in the Near East. Lithic Perspectives on Its Origins, Development and Dispersals2022

    • 著者名/発表者名
      Nishiaki, Y., Maeda, O. Arimura, M.
    • 総ページ数
      600
    • 出版者
      Sidestone Press
    • ISBN
      9789464260816
  • [備考] Manchester Obsidian Laboratory

    • URL

      http://manchesterobsidian.rocks/

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公開日: 2023-12-25  

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