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2023 年度 実施状況報告書

国際協働による西アジア先史時代における交易品の産地同定と交易ネットワークの解明

研究課題

研究課題/領域番号 21KK0008
研究機関筑波大学

研究代表者

前田 修  筑波大学, 人文社会系, 准教授 (20647060)

研究分担者 千本 真生  (財)古代オリエント博物館, 研究部, 研究員 (10772105)
黒澤 正紀  筑波大学, 生命環境系, 准教授 (50272141)
有村 誠  東海大学, 文学部, 教授 (90450212)
研究期間 (年度) 2021-10-07 – 2026-03-31
キーワード考古学 / 西アジア / 交易 / 黒曜石 / ビチュメン
研究実績の概要

本研究では、西アジア各地の遺跡から出土する黒曜石・ビチュメン(アスファルト)・土器の原産地を理化学的分析手法によって同定し、これらの物資の遠距離交易ネットワークの実態とその時間的変遷を考察することで、この時代の交易活動が果たした社会的・経済的役割をあきらかにすることを目標としている。マンチェスター大学での機器分析とアルメニア共和国でのフィールド調査を中心に、5年間の研究を実施する計画である。
2023年度の研究においては、夏季にイラク・クルディスタン地域シャフリゾール平原においてフィールドワークを実施し、ハラフ期および後期銅石器時代の居住層を持つシャカルテペ遺跡の発掘調査をおこなった。遺跡からは、黒曜石製石器およびビチュメンが付着した土器が出土し、これまで入手していた資料に加えて、時期が異なる新たな資料を入手することができた。
2024年3月には、アルメニアの黒曜石産地であるアルテニ山において、黒曜石のサンプリングを実施し、これまで不足していた産地資料を補うことができた。さらにアルテニ山の黒曜石は、その化学組成から少なくとも2つのグループに分かれることを確認することができた。また、アルメニアの共同研究者から黒曜石を胎土に含む土器のサンプルを新たに入手することができ、持ち帰ったサンプルの薄片を作成し現在分析中である。
同じく3月にはイギリスのマンチェスター大学をおいて、夏の調査でで出土した黒曜石石器およびアルメニアで採取した黒曜石原石の分析を、共同研究者であるスチュアート・キャンベル、エリザベス・ヒーリーらとともにハンドヘルド型蛍光X線分析装置を用いておこなった。ハラフ期のほかの遺跡と同様、この時期にはメイダン・ダー産の黒曜石が多く使われていたことが判明し、黒曜石交易の時期的変化を解明するための重要なデータとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2022年度に引き続き2023年度もイラク・クルディスタン地域でのフィールド調査を実施することができ、研究に必要な考古資料を十分に入手することができている。またアルメニアでのフィールドワークも実施することができ、黒曜石産地の調査も順調に進んでいる。2024年度には再度アルメニアを訪れて調査を継続する予定である。
蛍光X線分析装置を用いた黒曜石資料の産地同定分析においても、昨年度はマンチェスター大学の共同研究者が来日して国内の収蔵資料を分析したのに対し、今年度は研究代表者がマンチェスター大学を訪れ、共同研究を順調に継続している。これまで、本研究において約2000点の黒曜石資料の分析が完了しており、貴重なデータベースを構築するに至っている。
ここまで、研究期間1~3年目の計画は順調に進んでいる。

今後の研究の推進方策

2024年度も引き続きイラク・クルディスタン地域およびアルメニアでのフィールドワークをおこなうとともに、黒曜石資料、ビチュメン資料、土器資料の分析を進展させる。
アルメニアでの黒曜石産地調査は、アルメニア科学アカデミーの研究者らとともに2024年11月に一週間程度の調査を実施する計画である。採取した黒曜石は、これまでと同様、マンチェスター大学において蛍光X線分析装置で分析する予定である。
土器の分析に関しては、2022年度および2023年度に入手した、黒曜石を混和剤に含むアルメニアの土器資料の分析を引き続き進める。まずは土器の薄片資料を作成後にSEM-EDXによって分析し、その後、ICP-MSなどを用いて微量元素の組成を分析する。
それぞれの分析結果は論文としてまとめ、英文ジャーナルに投稿する。

次年度使用額が生じた理由

全体的な研究計画の実施に大きな変更は生じていないが、一部土器の胎土分析においては、当初の予定外に新たな土器資料をアルメニアで入手することができ資料数が増加したため、当初は2023年度末に予定していた薄片資料の作成を2024年度初頭に実施することに変更した。そのため、薄片作成のための機材購入費用と分析費用が2023年度中には未使用となり、次年度使用額が生じている。数ヶ月の遅延にとどまるため、今後問題なく計画を実施することができ、2024年度分として請求した助成金と合わせ、2024年度の土器胎土分析費用として使用する。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] マンチェスター大学(英国)

    • 国名
      英国
    • 外国機関名
      マンチェスター大学
  • [国際共同研究] 科学アカデミー考古学・民族学研究所(アルメニア)

    • 国名
      アルメニア
    • 外国機関名
      科学アカデミー考古学・民族学研究所
  • [雑誌論文] 新石器化と都市化のはざま─イラク・クルディスタン、シャカル・テペ遺跡の第2 次発掘調査(2023 年) ─2024

    • 著者名/発表者名
      小高敬寛・前田修・三木健裕・早川裕弌・板橋悠・R. カリーム サリフ・H. ハマ ガリーブ
    • 雑誌名

      考古学が語る古代オリエント 第31回西アジア発掘調査報告会報告集

      巻: - ページ: 40-45

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] Late Prehistoric Investigations at Shakar Tepe, the Shahrizor Plain, Iraqi Kurdistan: Preliminary Results of the First Season (2019)2023

    • 著者名/発表者名
      Odaka T., Maeda O., Shimogama K., Hayakawa Y.S., Nishiaki Y., Mohammed, N.A. and Rasheed, K.
    • 雑誌名

      Proceedings of the 12th International Congress on the Archaeology of the Ancient Near East.

      巻: - ページ: 415-428

    • DOI

      10.13173/9783447119030

    • オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] Interactions between prehistoric communities and raw materials in the Near East2023

    • 著者名/発表者名
      Campbell, S., Healey, E., Maeda, O., Arimura, M., Gasparyan, B., Petrosyan, A
    • 学会等名
      International Obsidian Conference (IOC) Engaru
    • 国際学会
  • [学会発表] Investigating the Late Neolithic in the Shahrizor Plain, Iraqi Kurdistan: Excavations at Shaikh Marif, the first season (2022)2023

    • 著者名/発表者名
      T. Odaka, O. Maeda, T. Miki, Y. S. Hayakawa, P. Yewer, H. Hama Gharib
    • 学会等名
      13th International Congress on the Archaeology of the Ancient Near East
    • 国際学会
  • [備考] Manchester Obsidian Laboratory

    • URL

      http://manchesterobsidian.rocks/

URL: 

公開日: 2024-12-25  

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