研究課題/領域番号 |
21KK0010
|
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
五島 聖子 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 教授 (80745216)
|
研究分担者 |
古谷 勝則 千葉大学, 大学院園芸学研究院, 教授 (10238694)
水内 佑輔 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (40768602)
西坂 涼 琉球大学, 国際地域創造学部, 講師 (50868198)
|
研究期間 (年度) |
2021-10-07 – 2026-03-31
|
キーワード | マンザナール収容所 / グラナダ収容所 / 学会発表 / 3D モデリング / デンバー大学学術協定 / 共同プログラム開設 |
研究実績の概要 |
当年度は、マンザナール収容所の遺跡修復工事に参加し現地の遺跡を調査するとともに、生存者へのインタビュー、ロサンジェルス日系博物館及び庭園協会において資料収集を行った。昨年度のグラナダ収容所現地調査結果をまとめ、論文 “Exploration of the Value of Japanese-Style Gardens in Incarceration Camps during World War II: The Case of the Amache, Colorado, U.S.” をInternational Journal of Heritage Studiesに投稿(査読中)し、3月に北米日本庭園協会国際会議(North American Japanese Garden Biannual International Conference)にて強制収容所での造園に貢献した日系人について学会発表 “Staying on the path” 及び、遺跡の3Dモデリングの可能性についての発表 “Unearthing History”を行った。 さらに研究代表者と研究協力者Clarkは、Oxford Research Encyclopaedia of Archaeologyに共著で執筆を開始し、長崎大学とデンバー大学の後期の授業で両大学の学部生および大学院生を合わせてグラナダ強制収容所の日系人と庭園についてのCOIL授業を行った。その後、Clarkは、日本を訪れ、京都・奈良の庭園遺跡と発掘・復元の手法を視察し、今後のグラナダ収容所の庭園の復元の指針とした。また研究代表者がClarkが教鞭を取るデンバー大学を訪れ、長崎大学とデンバー大学の間で学術協力協定を結び、グラナダ強制収容所の日系人と庭園についての研究と若手研究者の育成のための共同プログラム開設のために学術協定を締結した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画では、1年目にマンザナール収容所、2年目にグラナダ収容所、3年目にヒラリバー収容所に赴くことを予定していたが、ヒラリバーは原住民特別保護地区となり研究目的での立ち入りが困難なため、マンザナール収容所とグラナダ収容所の2箇所を調査することに変更した。当年度は、マンザナール収容所とグラナダ収容所の現地視察を行い、資料収集の結果を学会誌や学会で発表するとともに、海外の研究協力者と連携を深め、今後の協力体制の基盤を構築することができた。しかし、調査結果を論文としてまとめきれておらず、研究課題の進捗はやや遅れていると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
当年度は、グラナダ日系収容所跡地が正式にアメリカの国立公園に制定された。しかしながら、現在のグラナダ日系収容所跡地には、バラック一棟と管理塔一つが復元されているだけで、荒野が広がり、説明板も少ない。遺跡の殆どは地中に埋め戻され、とても観光客を招致する国立公園と呼べる状態ではない。今後、グラナダ日系収容所跡地で発掘された遺物をどのように解析し、どのように展示するか、収容所の建物や建物をどのように復元するか、特にすでに国立公園として整備されてきているマンザナール国立公園と対比しながら、新たな国立公園として整備されなくてはならない。世界平和が危ぶまれる今日、グラナダ日系収容所跡地に期待される役割は大きい。世界各国の人々にどのようなメッセージをどのように伝えるべきか、若い世代のアメリカ人と日本人が共同で考え、デザインし、維持管理していかなくてはならい。本研究の役割は、その連携の礎を構築することである。 そこで、今後の研究にあたっては、日本とアメリカの大学の連携を深め、相互の若手研究者と学生を介入しながら、博物館で展示可能な庭園の3Dモデルの構築のほか、遺跡の解析を進め、学会などで共同で成果を発表する機会を設ける。また、複数大学間によるCOIL授業を定着させ、国際的な若手研究者を養成する場を作る。
|
次年度使用額が生じた理由 |
初年度にコロナ禍のため現地調査に行くことができなかったので、初年度に計上した渡航費が未使用額となった。本年度は計画通り現地調査ができたので、今後は計画通りに研究を推進できることを見込んでいる。次年度においても現地調査、論文の作成および海外での学会発表で未使用分を合わせて経費に充てて研究を進める。
|