研究課題/領域番号 |
21KK0012
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小口 高 東京大学, 空間情報科学研究センター, 教授 (80221852)
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研究分担者 |
笠井 美青 北海道大学, 農学研究院, 准教授 (80294966)
河本 大地 奈良教育大学, 社会科教育講座, 准教授 (10454787)
早川 裕弌 北海道大学, 地球環境科学研究院, 准教授 (70549443)
飯塚 浩太郎 東京大学, 空間情報科学研究センター, 助教 (60768620)
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研究期間 (年度) |
2021-10-07 – 2026-03-31
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キーワード | ルーマニア / 土砂 / 災害 / 自然環境 / 社会環境 |
研究実績の概要 |
本研究はルーマニアでの現地調査を主体とし、2022年3月に最初の調査を行う予定であった。しかし、コロナ禍により不可能となった。そこで、次年度以降の本格的な研究に向けて日本で可能な検討を進めた。 土砂移動と土砂災害の重要な原因である斜面崩壊について、中解像度のデータを用いた統計的な検討を行った。調査地域は本研究の対象であるルーマニア中部のカルパチア山脈と、日本の南アルプス南部である。斜面崩壊の発生しやすさを地形・地質などの土地条件から推定するモデルを、機械学習の技法であるランダムフォレスト法を用いて構築した。この際には実際に斜面崩壊が発生した場所とともに、斜面崩壊がない場所をサンプリングする必要があるが、後者については多様な方法が提案されている。ここでは複数の種類のランダムサンプリングを適用し、モデルの適合度を地域の地質の複雑さを考慮しつつ検討した。その結果、地質が複雑な地域ではランダムサンプリングの方法が適合度を大きく変えることが判明した。この地質の重要性を示す結果は、現地で高解像度のデータを取得して行う次年度以降の検討に示唆を与えるものである。他にも本研究と関連する地形学的な研究を行い、たとえば地震で生じる斜面崩壊や地すべりに対し、線状凹地の発生が強く関与していることを統計解析や機械学習で明らかにした。 本研究では現地調査でドローンを活用する予定である。そのための技術的な検討として、地形・植生の3次元モデルの構築と、それに基づく変化の抽出の位置精度について研究した。また、衛星データを用いて広域の地形変化を抽出する手法についても検討した。 さらに、土砂災害と関連するルーマニアの社会経済・文化的事情等に関する文献のレビューも行った。また、研究対象地域が属するブザウ地域がユネスコ世界ジオパークに認定されたことを受けて、ジオパークとしての本地域の状況についても調査した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍のために、予定していた年度内の現地調査を行うことができなかった。このため、現地調査を主体とする本研究の進展は遅れていると判断される。一方で、対象地域に関する地理情報を用いた研究、関連する地形学やリモートセンシングに関する技術的な検討、および社会情勢に関する文献調査等は行うことができ、その結果は今後の研究にも有用とみなされる。また、ルーマニアの共同研究者とは電子メールで頻繁に連絡をとっている。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度以降は現地に実際に渡航して調査を行うことを最重視する。当面、2022年度内に複数回の渡航を行うことを目指す。2022年5月中旬の時点では、ルーマニアの感染症危険情報はレベル2であり、「不要不急の渡航中止」とされている。これは考慮すべであり、慎重な行動を要するが、必要があれば渡航できるとも解釈できる。一方で、ウクライナへのロシアの侵攻にも配慮が必要な状況になっている。ウクライナの隣国であるルーマニアの社会情勢や、軍事的目的での使用が増えているドローンの運用に対する新たな制約などについて、最新の情報を得るように留意しつつ研究を進めるようにする。また、日本で可能なデータの収集や解析も、引き続き行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の予算の大半を投入する予定であった現地への渡航および現地調査が、コロナ禍の影響で全くできず、予算が執行されなかったために次年度使用額が生じている。現地調査を延期した回数も含めて実施することにより、予算を使用していく予定である。
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