研究課題/領域番号 |
21KK0014
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
西前 出 京都大学, 地球環境学堂, 教授 (80346098)
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研究分担者 |
淺野 悟史 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (10747869)
時任 美乃理 京都大学, 農学研究科, 助教 (20824220)
小林 広英 京都大学, 地球環境学堂, 教授 (70346097)
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研究期間 (年度) |
2021-10-07 – 2025-03-31
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キーワード | 社会実装 / 地域資源管理 / カンボジア・ラタナキリ / 地域計画 |
研究実績の概要 |
本研究では,限りある資源を切り売りすることで成り立ってきた生業構造を,元々ある地域資源を最大限に活かすことによって改善するための理論を構築し,その理論を利害関係者との議論を通じて,地域が受容できる形で提案すること,および,その社会還元を行うことを最終的に目指している。研究の3年目として,関連文献レビューとこれまでの調査経験から得た知見を基に地域資源情報の整理,および重点的に収集すべき情報と調査項目についてデータ収集と解析を行った。調査地のひとつであるカンボジアへの渡航は,2024年3月に別の財源で実施し,現地共同研究者と共に現地調査を行った。また,現地では,統計局等を訪れて多様なデータを収集することができた。王立農業大学の共同研究者も調査に同行し,現地の農業従事者とのインタビュー調査も実施できた。もう一つの調査地であるベトナムへは,2023年6月に渡航し,現地調査の実施,利害関係者との会合を持つ事ができた。収集してきたデータを元にした議論を行い,また,これまでの分析結果を共有することで,最終年度の研究方針についても議論を行った。若手研究者との研究会も開催し,最先端の地域研究の成果について共有した。 また,海外の若手研究者に過疎農村の事例を把握してもらうために,愛媛県西条市の地域踏査を複数回実施し,その都度,ビデオを作成した。セミナーについては,Zoomを用いて,不定期開催となったが,おおよそ月に二度から三度の頻度で実施した。ここでは,研究進捗報告,関連文献レビュー,プロジェクトの方向性の確認等を行うと共に,西条市で作成したビデオも共有し,討論を行った。ベトナム・カンボジア・日本の若手の人材育成と人的ネットワーク形成の端緒を形成したものと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カンボジア,ベトナムでの現地調査が実施でき,共同研究者と共に,必要な社会経済データ,地理的データの取得を進めると共に,関係者への聞き取り調査等を実施した。また,これらのデータの解析を行い,その結果の一部は,国際会議等で発表を行った。また,オンラインによる遠隔定期セミナーは昨年度に引き続き実施したこと,および海外の調査地にて十分な現地調査を実施したため,おおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
カンボジアの対象とする村で,世帯ごとの住民への悉皆調査(全世帯調査)を実施し,近年の生活状況や変化,収入の状況(概略のみ),土地利用,生業の変化等の情報を収集し,分析を行う。この分析では,生活構造の変質を明確化するため,プランテーションによる生業の多様性喪失・相続のための土地の細分化・養育費(特に教育費)の割合・互助関係の弱体化等,生活構造の構成が変化した事で,外的要因に曝される要素が,生活構造のどの程度の割合を占めているのかを統計的に示す。それぞれの要素が住民の生活構造にとって負の要因であるか,正の要因であるかも聞き取りの状況や文献を参考にして検討し分類する。 検討した脆弱性の要因を検証するため住民への追加調査(ベトナム,カンボジアで1回ずつ)と行政への詳細な聞き取りを実施する。行政機関では,分析結果に基づく要素の因果関係を提示し,現在の農業政策との関連について議論を行う予定である。生業が特定のプランテーションへ完全に特化した世帯も多く存在すると想定されるため,こうした世帯の収入状況,買い付け価格の変遷,普段の食料の入手方法なども明確化する。 また,遠隔セミナーについては,本年度も継続して実施し,若手育成およびネットワーク形成を強固にすることを目指す。 最終年度となるため,学術論文の執筆も進め,成果のアウトリーチ活動にも努める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
カンボジアでの出張期間が他の用務の影響で想定よりも短くなったこと,および,共同研究者1名が急遽,参加できなくなったことに起因する。本年度については,複数回の海外渡航を通じて,詳細な現地調査と成果還元を行う予定であり,予算を効率的に消化し,学術的な成果を挙げる予定である。
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