研究課題/領域番号 |
21KK0015
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松四 雄騎 京都大学, 防災研究所, 教授 (90596438)
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研究分担者 |
西井 稜子 新潟大学, 災害・復興科学研究所, 准教授 (00596116)
松岡 憲知 茨城大学, 教育学部, 特任教授 (10209512)
大澤 光 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 研究員 (70839703)
今泉 文寿 静岡大学, 農学部, 教授 (80378918)
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研究期間 (年度) |
2021-10-07 – 2025-03-31
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キーワード | 大起伏山地 / 土砂移動現象 / モニタリング / 樹木年輪記録 / 露出年代測定 |
研究実績の概要 |
本年度は,氷食の影響の少ない気候帯・標高帯にある国内の山地における検討として,マスムーブメントの実相およびその要因に関する調査を行うとともに,土砂災害の実態把握を行った.南アルプスにおける大規模崩壊地の凍結・融解環境を評価するため,まずは積雪期間に着目し,標高の大きく異なる2つの崩壊地を対象に,定点カメラ画像を用いて,その積雪・消雪状況を調査した.また,大規模地すべり発生の素因となる線状凹地内の地下構造を明らかにすることを目的に,南アルプスの大起伏山地の地すべり地にて地質踏査と物理探査(常時微動探査および弾性波探査)を行った.南アルプス大谷崩においては,土石流モニタリングや地形計測を行った.さらに,多雪地域の地すべり発生メカニズムを明らかにするため,積雪層内の水の浸透に関する野外トレーサー実験を行った.日本アルプスの高山帯でのドローンによる構造土の分布・形態の視覚化とこれまでに得られている21年間の礫移動データの総括を実施した. パラ/ポストグレーシャルな土砂生産とマスムーブメントが卓越するスイスアルプスでは,本研究開始後最初の岩盤破壊・岩石氷河・構造土の動態に関するフィールドワークを実施した.スイスアルプス西部の観測サイトにおいて土石流モニタリングや地形計測を行い,日本の山岳域との地域間比較を行うために必要なデータの蓄積を行った.スイスアルプスの西部と東部において,過去の氷食によって形成されたU字谷斜面での大規模マスムーブメントが生じている流域を対象に,デジタル標高モデルを用いた地形解析を行い,岩盤の変形と崩壊の形態的特徴を分析するとともに,それらが生じている地質・地形的な場の条件についての検討を行った.また,宇宙線生成核種を用いた露出年代測定のための試料処理の方法と実施環境を改善するとともに,加速器質量分析によるBe-10の検出感度向上のための検討を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内山地での観測体制整備やデータ蓄積が進むとともに,新興感染症の影響により前年度まで困難であったスイスアルプスでの調査・観測を,再開できたため.宇宙線生成核種の分析手順や実験環境の向上が達成でき,より高精度・高確度なデータ獲得に必要な条件が整った.また,日本の中部山岳域の地形的特性やその発達についてまとめた論文が査読中であり,成果発信についても期待が持てるため.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,日本の中部山岳域における土砂動態について,観測による実態把握,同位体を用いた速度論の展開,地理情報システム上でのモデリングを重点的に進める.また,スイスアルプスにおける研究については,本格的な踏査・観測と試料採取を再開する.得られた試料は日本の実験施設・分析機関において処理・測定し,年代論あるいは速度論的なデータの取得を進める.また,デジタル地形情報を用いた地形解析や地形発達のモデリングを進め,最終氷期における氷食の少ない日本の中部山岳と,完新世におけるパラ/ポストグレーシャルなマスムーブメントの卓越するスイスアルプスの比較論が展開できるように検討を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
新興感染症の流行状況をみて研究参画者の一部が海外渡航調査を控えたため.使用可能な予算は次年度以降の渡航調査費に充て,また必要に応じて観測・分析のための消耗品購入費用および実験補助者の雇用経費を拡充する.
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