研究課題/領域番号 |
21KK0017
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
吉田 邦彦 北海道大学, 法学研究科, 教授 (00143347)
|
研究分担者 |
牛尾 洋也 龍谷大学, 法学部, 教授 (10247819)
今野 正規 関西大学, 法学部, 教授 (10454589)
橋本 伸 小樽商科大学, 商学部, 准教授 (20803703)
RodriguezSamudio RubenEnrique 北海道大学, 法学研究科, 協力研究員 (20822662)
西原 智昭 星槎大学, 共生科学部, 特任教授 (70871127)
広瀬 健一郎 鹿児島純心女子大学, 人間教育学部, 准教授 (80352491)
ゲーマン・ジェフリー ジョセフ 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 教授 (80646406)
上村 英明 恵泉女学園大学, 人間社会学部, 教授 (90350511)
木村 真希子 津田塾大学, 学芸学部, 教授 (90468835)
|
研究期間 (年度) |
2021-10-07 – 2024-03-31
|
キーワード | 先住民族 / 脱植民地化 / UNDRIP / ポスト・ウェストファーリア / 補償 / 自己決定権 / 所有権 / 遺伝的知識 |
研究実績の概要 |
世界中の先住民族への過去の不正義に関する理論的・比較法的研究は、国連の先住民族の権利宣言に基づいて、徐々に進められてきている。法的問題としては、土地・環境問題、遺骨返還、知的所有権、先住権(漁撈権など)などがあり、日本の状況は「世界標準」からは遅れており、諸外国からは学ぶところが多い。しかし、冷戦期からの国際政治の大きな変化で、民族紛争は分散して止まず、強制移民や先住民族の周縁化がもたらされ、先住民族の権利実現はバラツキがあり、地域により国により、その文化的背景の相違から区々に分かれる。従って、ここではグローバルなポスト・ウェストファーリア的な脱植民地的な先住民族の状況を包括的、学際的、そして経験的(実証的)に考察する。世界各地の先住民族問題のエキスパートとの学術交流を深める本研究では、第1に、国際情勢一般で、国連との関係を密にして、第2は、先住民族問題の先進諸国として、アメリカ合衆国、カナダ、北欧、オセアニアからの聞き取りを行い、第3に、発展途上国の先住民族については、中南米ないしアフリカ諸国を扱う。第4には、日本法が位置づけられる近隣諸国として、東アジアとしては、台湾、東南アジア(タイ及びフィリピンなど)を扱う。交流形態としては、学理的な議論、先住民族のかかえる諸課題の現場のフィールドワーク、先住民族との交流会などを考える。日本の先住民族(アイヌ民族、琉球民族)がかかえる諸課題の検討が最終的着地点である。
こういう研究計画であったが、初期年度はコロナ禍のために、かなりの逆境であるが、それでも、アイヌ民族の問題状況の精査による足場固めを行い、さらに、アメリカでの先住民族の交流を細々続け、さらにフランスのユネスコ本部で先住民族知識の意見交換を行い、ブラジル先住民族のコロナ被害調査などを行い、隣国との平和島ネットワークでも、先住民族の視点を掲げた。まだ緒についたところであろう。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初期段階では、コロナ禍を踏まえて、文献学的研究として、「先住民族の権利の地域的実現」に関する現況調査、「実定法学的研究」としてアイヌ民族を中心とした、所有権問題、漁業権問題、遺骨返還問題などの課題確認を比較法的に確認することを主目標とした。そのために、日本国内のアイヌ民族の関連シンポには、オンラインも含めて積極的に参加に努めた。
しかし他方で、コロナ問題の徐々の低減に伴い、欧米を中心とした海外との学術交流も行うことを始めた。とくにアメリカ合衆国、またフランス・ユネスコ本部の世界文化遺産論などをバネとする先住知識・先住世界論の学術交流、そしてフランスの先住民族の動向調査の初発のところを行うことができたのは、幸いであった。
|
今後の研究の推進方策 |
これらの初発段階の交流の延長線で、アメリカのコロラド大学、カナダのブリティッシュ・コロンビア大学を拠点に訪問して、国際人権及び米加原住民法についての意見交換を行い、また国連EMRIPの活動に応じて、ニューヨークやジュネーブも訪問し、適宜アイヌ民族の状況の報告を行う。
さらに、第1に、既に長年連携ができているハワイ大学ロースクールやアラスカ大学に滞在して意見交換しつつ、ハワイ原住民・アラスカ原住民の補償政策(教育、医療・福祉、住宅政策など)の進捗状況を継続調査し、これまでの交流の延長で後続研究を進め、第2に、北欧のウメオ大学のサーミ研究所との研究交流を再開し、共同研究強化に努めて、第3に、オセアニア(とくにオーストラリア国立大学)での先住民族の共同研究を行う。
同時に、開発途上国のコロナウィルス問題の終息を見計らい、中南米先住民の先住民族研究、とくにアマゾン川流域の状況の調査を、サンパウロ大学の支援の下で遂行し、併せて中央アメリカにおける国際人権法の履践状況も追跡調査する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で、海外出張が制約されたために、こういう事態となっているが、状況の改善とともに、意識的に国際交流を行うことにより、こうした事態の解消を図る。とくにアラスカ原住民、北欧、オセアニアの先住民族関係の学術交流は手つかずの状態であるので、次年度から補強したい。
|