研究課題/領域番号 |
21KK0024
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
高橋 基泰 愛媛大学, 法文学部, 教授 (20261480)
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研究分担者 |
張 テイテイ 東北大学, 経済学研究科, 助教 (60803046)
長谷部 弘 東北大学, 経済学研究科, 名誉教授 (50164835)
佐藤 睦朗 神奈川大学, 経済学部, 准教授 (90409855)
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研究期間 (年度) |
2021-10-07 – 2026-03-31
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キーワード | 地域金融組織 / 小口金融 / 日欧対比分析 / 社会的「共同性」 / 事例研究 |
研究実績の概要 |
2021年10月初旬の本研究課題の採択通知以降も、コロナ禍による海外渡航および国内出張もままならない状況が続いた。そのため、2022年3月までの半年間では、オンライン上での議論を続け、とくにもっぱら研究成果公開のための出版原稿の検討のために研究時間を費やした。その結果、2022年3月30日に出版したのが、モノグラフ研究、長谷部弘・高橋基泰・山内太共編著『近世日本における市場経済化と共同性 近世上田藩上塩尻村の総合研究Ⅱ』(刀水書房、2022年)である。本書は、本研究計画のテーマである、近世期地域金融組織の存在形態の日欧対比をする際に準拠枠となる日本の事例研究である。とくに高橋基泰『村の相伝・日英対比研究編 社会的DNAの検出』(刀水書房、2021年)(第9章)で日英対比の上で示唆していたところの地域金融組織である通常の講・無尽が、上塩尻では多数の家々の市場活動が、蚕種取引を中心とした複合的な生業活動として展開されたことが示された(第4章)。このような市場経済化の状況を反映し、18世紀の半ばには、上塩尻村において通常の満期解散型の金融講が組織された。この延長上で、天保年間以降、通常とは異なる長期継続的な金融組織である永続講が新たに結成されている。この上塩尻村永続講は、積立・貸付を行いつつ、講員の家産の一部である資金の蓄積を目指した地域金融組織であった。本研究計画は、日本独自の「イエ」を基点に、西洋で「家」を発見し、「家計」形成を見出すと いう着想を基礎とし実証した成果をもって地域小口金融に関する存在形態を究めるというものである。したがって、今後は近代的地域金融組織の日欧対比を行い、市場経済形成期農村社会のあり方に対して新たな視点からの分析を施すことになる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記のように、2021年10月初旬の本研究課題の採択通知以降も、コロナ禍による海外渡航および国内出張もままならない状況が続いた。そのため、2022年3月に予定していた海外研究協力者である英国ケンブリッジ大学歴史学部クレイグ・マルドルー教授の学術振興会海外研究者短期招へい(1ヶ月)は2022年9月までの延期となった。マルドルー教授も加わり、日本側の研究対象地である、長野県上田市上塩尻での国際公開シンポジウムの開催も半年の延期となった。もちろん、出張ができないなりに、研究計画は遂行させており、大幅なものではないにせよ、やはり自己点検ではやや遅れている、と言わざるをえない。
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今後の研究の推進方策 |
【業績】のところで示した本研究計画の研究成果の一部である著作『市場経済化と共同性およびその基礎となる著作『村の相伝・日英対比研究編』の英文化をすすめ、それを用いて海外共同研究者との議論を深める、9月に短期招へいによる1ヶ月の来日が予定されているクレイグ・マルドルー教授に加え、さらにやはり10月には来日できるようにと、フィンランド・ヘルシンキ大学ベアトリス・モリング博士の招へい申請も行っている。彼らとの日本における現地調査による知見を踏まえ、2022年内にコロナ・ウィルスの状況をよく確認した上で、英国に出張し、現地での史料調査を遂行する。その成果をも織り込んだ報告を、2023年4月にスウェーデン・ウプサラ大学での開催が予定されているESSHC(ヨーロッパ社会科学史学会)におけるマルドルー教授の組織するパネルで行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年3月に海外研究協力者である英国ケンブリッジ大学クレイグ・マルドルー教授を学術振興会海外研究者短期招へいにより1ヶ月間愛媛大学に受け入れ、その間、長野県上田市上塩尻を拠点に国際公開シンポジウムを開催する予定であった。コロナ変異株の影響を受け、使用するはずであった分がそっくり残り、次年度使用額が生じた。次年度である2022年9月に延期となったマルドルー教授の招へいが実現した際に使用する予定である。また、10月に招へい予定で現在申請中のヘルシンキ大学モリング博士の申請も採択となれば、そちらでも使用する。
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