研究課題/領域番号 |
21KK0031
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
片桐 恵子 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (80591742)
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研究分担者 |
竹内 真純 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 特別研究員(RPD) (20738059)
福沢 愛 東京大学, 未来ビジョン研究センター, 特別研究員 (50769792)
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研究期間 (年度) |
2021-10-07 – 2025-03-31
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キーワード | 新型コロナウイルス / 高齢者 / リスク認知 / ソーシャル・サポート / 対面交流 / ICT利用 |
研究実績の概要 |
新型コロナウイルス(以下新型コロナ)の流行は、人々の行動にさまざまな制限を課してきた。特に高齢者は感染・重症化リスクが高いため、外出自粛が強く求められ、1年以上に及ぶ活動や親しい人との交流の制限は、高齢者の心身に大きなダメージを与えていると考えられる。ストレスの影響の緩和にはソーシャル・サポートが有効であるが、コロナ前のようにソーシャル・サポートを得ることは難しく状況にある。 対面交流の代わりにインターネットによる遠隔交流が一気に進んだが、対面交流を比較してどの程度の効果があるのかは不明である。また高齢者のICTスキルの違いにより、ICTの活用度の差が生じている。よってコロナ禍のソーシャル・サポートの授受において、ICTを使いこなす高齢者と使えない高齢者に大きな格差が生じている可能性がある。 ポストコロナ社会においてもICTの活用は進んでいくと予想されるが、日本の状況は先進諸外国に比べて大幅に遅れている。本研究では、デジタル化が進み、日本に近い家族関係や家族規範を持つ韓国と香港において、高齢者のICTの利用の様子とその効果について、精査することで、今後の日本における高齢者のICT活用に関する施策に参考となるような知見を得ることを目的としている。 2021年度は、海外共同研究者、梨花女子大学Chung氏と香港大学Lou氏との申請者片桐が2020年度から“COVID-19 and Older Adults” というテーマで実施してきた国際共同研究の調査データを統合し、分析・検討、2022年6月までに国際共著論文の執筆・投稿の準備を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度は、海外共同研究者、梨花女子大学Chung氏と香港大学Lou氏との申請者片桐が2020年度から“COVID-19 and Older Adults” というテーマで実施してきた国際共同研究の調査データを統合し、分析・検討、2022年6月までに国際共著論文の執筆・投稿の準備を行う予定であった。 研究内容はコロナ禍における高齢者のリスク認知と行動変容をテーマとし、新型コロナウイルスの流行が高齢者に与えた影響、人との対面交流とICT利用の変化などについて3国間で比較することである。 調査は各国がそれぞれ研究資金を調達し、65歳以上の高齢者に対して行う予定であった。日本と韓国については、調査は完了したが、香港大学では、研究助成金の獲得が難航し、日本と韓国と同じ規模のデータが収集されるに至っていない状況にある。このようなアンバランスなデータでどのような3国間データの比較が可能であるか、現在検討中である。 一方、新型コロナウイルスの流行と高齢者をテーマとした研究は、欧米を中心として行われており、様々な知見が報告されている。これらの研究は様々な研究分野で実施されているが、いまだ記述的な結果の報告にとどまるレベルであり、統合的な視点から整理は行われていない。現在若手研究者を中心に、これらの研究内容をまとめて、先行研究の整理を進めている。 2022年度前半に、これらの先行研究の結果と3国データの分析を統合して、国際共著論文を執筆・投稿する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、前半に“COVID-19 and Older Adults” というテーマで実施してきた国際共同研究の調査データとこれまでの本テーマで実施されている先行研究の整理に基づいた国際共著論文の執筆を進める。この結果は、11月のアメリカ老年学会での発表を予定している。 また2022年度は、上記の研究結果を踏まえ、コロナ禍における高齢者のソーシャル・サポートの授受の様子や、ICT利用の活用度、新型コロナウイルスのリスク認知やコロナ禍での行動変容などについて、日本・韓国・香港において、高齢者とシニアセンターのスタッフに対し、インタビュー調査を行う予定である。現在のところ、本研究計画申請時の予想に比べ、新型コロナウイルスの流行は長引いており、各国の対応もまちまちである。国や所属機関からの渡航制限もあり、本年度中の実施可能性や実施時期は未だ決められない状況にあるが、とりあえずインタビュー調査の実施の準備を進めている。 新型コロナウイルスの3か国の流行の状況を見ながら、zoom等のweb会議システムも利用可能であるシニアセンターのスタッフに対するインタビュー調査を行い、その後高齢者の対するインタビュー調査を行い、コロナ禍においてもできる限り研究を進める方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
香港での調査の進行が遅れ、日本・韓国・香港の3各国データの統合が遅れているため
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