研究課題/領域番号 |
21KK0035
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
伊野 義博 新潟大学, 人文社会科学系, フェロー (60242393)
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研究分担者 |
加藤 富美子 東京音楽大学, 音楽学部, 客員教授 (30185855)
権藤 敦子 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 教授 (70289247)
平山 雄大 お茶の水女子大学, グローバル協力センター, 講師 (80710649)
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研究期間 (年度) |
2021-10-07 – 2025-03-31
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キーワード | ヘリテージ・エデュケーション / 教員養成プログラム / ブータン民俗音楽研究 / 伝統音楽教育 |
研究実績の概要 |
研究初年度は,短期間でもあることと新型コロナウイルス感染症の影響も考慮し,オンライン・ミーティングによる課題の明確化と研究計画の具体的な検討に着手した。具体的には,本研究が日本・ブータン共同開発であることに鑑み,まず,ブータン側と日本側による研究目的・研究内容・研究期間・研究メンバー等の確認・共有をし,共通理解を行った。その後定期的にミーティングを重ねる中で,次年度の核となる民俗音楽調査と授業研究について,実施に向けた検討を開始した。 前者については,次年度調査地をティンプー,シェムガンとし,ティンプーにおいては,ブータンの伝統音楽研究者や伝承者へのインタビューならびに文献調査,シェムガンでは,当地の民俗音楽を網羅的に調査することにした。これに伴い,調査シートの作成や必要経費の検討など行った。また,コロナウイルス感染症の状況が改善されない場合,ブータン側の現地調査とそれに日本側がオンラインで参加する方法等の検討等も行っている。これにそなえ,録画用カメラやハードディスクなど必要機材を購入,EMSを利用し,ブータンに送付している。 後者については,PCE(Paro Colledge of Education)の授業参観を開始した。PCEにおける教員養成カリキュラムの実際を確認,共有,理解するためのもので,PCEの授業をオンラインで結び日本側が参観する形を採っている。 これらに加え3月,民俗音楽調査の結果発表として,日本民俗音楽学会第10回研究例会において,ブータン西部の土壁つくり歌Pa Tsiについて,日本・ブータン双方の研究者による共同発表を行っている。また,2022年度の調査・研究計画・研究予算等について,実践に向けた打合せを継続した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度については,計画当初からオンラインミーティングを中心とした研究推進を予定していたため,コロナウイルス感染症の影響下においても,おおむね順調に進展しており,年度内に計画していた授業研究の開始,調査活動の打ち合わせ等を行うことができている。 ブータン側との連絡は,FacebookのMessenger,E-mail,共同研究は,Web会議システムZoomなどを活用して行っているが,時差や双方のスケジュール,さらにインターネット環境や機材の状況等により,細かな問題が生じている。ブータン側から調査活動の早期実施の可能性が示唆されたこともあり,必要機材の送付を試みた。しかしながら,日本からのEMSによる機材送付についても,コロナウイルス感染症禍では到着に3,4週間もかかり,加えて,ブータン側でも都市のロックダウンが繰り返され,パロにあるPCEのメンバーがティンプーに到着した機材を受け取りに行けない日々が続いたりし,研究推進の調整が必要となった。また,ブータンへの渡航の見通しがつかないことも関係し,ブータン側での民俗音楽調査費用の日本からの送金についてもスムーズな実現のための時間を要している。調査期間についても,PCEの授業期間や日本側の渡航予定の見通し等の問題から,今後さらなる調整が必要となる。 このような課題はあるものの,PCEの授業参観が開始され,教員養成の実態把握や共通理解,カリキュラムの共有などがされつつある。また。研究調査地域の確定や調査内容・項目の具体的な検討や改善など,全体としては,当初予定されていた計画が進められてきた。
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今後の研究の推進方策 |
オンラインミーティングでの研究推進は,準備段階としてはそれなりの成果をあげており,今後も継続していく。しかしながら,計画された共同現地調査やPCEでの教材化・教員養成プログラムの検討を実施していくには,オンラインを主たる手段とした研究推進では限界がある。コロナウイルス感染症の状況にもよるが,次年度においては,日本側研究者のブータン渡航を実施し,実質的な共同研究体制を組む必要がある。 2022年4月,ブータンでは,ホテルでの5日間の滞在が必要なものの,外国人の受け入れを再開しており,現地での共同研究の可能性が大きくなっている。2022年度においては,日本側の研究者が合流し,現地調査の打ち合わせと実施,オンラインを含む授業研究の具体的な方法の確定をしていく。当初計画では,8-9月に共同での地域の伝統文化・音楽調査,12-1月のPCEでの教材化・教員養成プログラムの検討が予定されているが,これを実施していく方向である。なお,調査を充実させるために,必要においてブータン側の研究者のみの調査も検討する。その場合,インターネットを活用した日本側のオンライン参加についても,模索していく。 研究に関わる予算について,スムーズな実現のためのプログラム協定書を交換する。これは,PCE教員が共同研究を遂行するための予算執行をより円滑に行うためのものである。 これらの研究成果の報告については,日本音楽教育学会,日本民俗音楽学会,日本ブータン学会等の学会発表や論文として公開する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は研究期間が短いこと,コロナウイルス感染症禍における共同研究の実施がオンラインに集中する中で,ブータン側の教育研究の実態把握に焦点が当てられたことから,必要な情報を得るための文献,資料等の購入まで至らなかった。また,ブータン国内での関係文献,資料の直接購入の必要性もあり,これらは渡航後の購入が適切と判断した。次年度に必要な物品として購入する計画である。
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