研究課題/領域番号 |
21KK0036
|
研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
伏木 久始 信州大学, 学術研究院教育学系, 教授 (00362088)
|
研究分担者 |
山辺 恵理子 都留文科大学, 文学部, 准教授 (60612322)
市川 桂 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (60754546)
坂田 哲人 大妻女子大学, 家政学部, 講師 (70571884)
|
研究期間 (年度) |
2021-10-07 – 2025-03-31
|
キーワード | 単元内自由進度学習 / 自己調整学習 / へき地教育 / 小規模校の教育課程 |
研究実績の概要 |
令和3年度はコロナ禍で海外取材ができなかったため、今年度は本研究グループのメンバー4名全員で、デンマーク領のグリーンランドという国際的にみてもへき地の典型エリアの学校教育を現地取材することで、へき地教育の今後の課題と展望を国際的な視野から考察することを始めた。グリーンランドにおけるへき地教育については、先行研究がきわめて少なく当初の予想にはなかった特殊事情を抱える地域であり、歴史的・政治的にも複雑な事情をもつ島であることがわかった。また、デンマークの離島の小規模校やフィンランド国内の小規模校などの日常の教育実践を視察し、それぞれの学校事情を調査することができた。そして、長野県内のへき地・小規模校のフィールドワークを通して、日本的な教育課題にも着目し、同時に日本の小規模校の強み(長所)も明らかにした。 これらの研究成果は、次年度の研究雑誌に公表する予定であるが、各国のへき地・小規模校の実態は、歴史的・経済的背景は異なるものの、いずれも統廃合の危機的状況を迎えており、地域と学校との分断を招きかねない状況にあることを確認した。さらに、そうした該当校の教育インフラや教職員の配置が不十分なものになりがちな点も、各国共通の問題点であることも再確認できた。 こうした調査と並行して、へき地校の条件をマイナスに捉えるのではなくむしろプラスに考えて構想する学校づくり、教育課程編成、授業設計や学習指導等を積極的に試行していくフィールドを複数確保できた。具体的には「単元内自由進度学習」を各学校事情に合った形で導入しつつ、ICT環境も整備しながら学習者が自律的に学ぶ学習プログラムをへき地校に普及させていく研究環境を整えた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
グリーンランド調査等の海外でのへき地教育調査に関しては、現地取材によって初めて明らかになったことが多かったために、当初の研究計画よりも研究雑誌に公表するための時間を要しているが、今年度のフィールド調査自体からはきわめて貴重な情報が得られたと言える。 また、国内のへき地教育の調査においては、授業レベルの具体的な中身を協働で研究開発していく協力校も得られ、自己調整的な学習の先行研究の整理も進んだ。これらの進捗状況を総括すると、おおむね順調に進展していると自己評価できる。
|
今後の研究の推進方策 |
北欧諸国と日本のへき地校の教育的課題を比較しながら両者それぞれの望ましい「へき地教育プログラム」を開発し、そのために求められる教員養成カリキュラムを構想する予定でいたが、教員養成段階よりもむしろ現職教員の研修内容として取り込むことの方が優先されるべき状況を理解するに至った。したがって、教員養成カリキュラムに対する提言を踏まえつつ、喫緊の課題として現職教員の研修内容を具体的に提案することを本研究の課題に追加することとした。 そこで、日本のへき地・小規模校における自律的な学習モデルを試行実践し、求められる現職教員のための研修モデルの開発にウェイトを置いた研究に重点を移すこととした。そのための実践協力校として、長野県の中山間地域の小規模校を3校(以上)確保できた。また、フィンランドのへき地・小規模校にも本研究の協力校を得ることができたため、日本とフィンランドそれぞれの学校教育の文脈における「自律的な学び」を整理し、そうした学習を指導できる教師の要件を次年度の研究プロセスで明らかにする。 さらに、両国のへき地教育の専門家・実践者を一堂に会して、へき地教育の将来展望を考え合うフォーラムを最終年度(令和6年度)に企画する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究代表の伏木が令和4年度はサバティカル・リーブとしてフィンランド国立教育研究所に客員研究員として滞在していたが、コロナ禍とロシアのウクライナ侵攻問題の影響を受け、調査旅費や滞在経費が膨張したことが大きな理由となり、次年度予算額の前倒し請求(290万円)を行った。また、海外出張の計画を立てにくい状況のなかで、フィンランド滞在中の研究代表者(伏木)が当初の予定にはなかったフィンランド以外の第三国への調査も実施したことによる旅費の追加も、前倒し請求を必要とした理由である。 その残りが約18万円程度となり、次年度に送る金額となった。
|