研究課題/領域番号 |
21KK0039
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
古田 弘子 熊本大学, 大学院教育学研究科, 教授 (60315273)
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研究分担者 |
中村 沙絵 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (80751205)
川口 純 筑波大学, 人間系, 准教授 (90733329)
東田 全央 淑徳大学, アジア国際社会福祉研究所, 主任研究員 (60892528)
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研究期間 (年度) |
2021-10-07 – 2026-03-31
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キーワード | スリランカ / 障害 / 子ども / 教育 / 教育的包摂 / インクルーシブ教育 / 特別なニーズ / 特別学校 |
研究実績の概要 |
R3年度秋に交付内定通知書を受け取って半年を経過した後、R4年度は本格的な研究活動に着手した。それらは主に以下の2点に分けられる。 第1に、本科研研究メンバー(国内4人、スリランカ5人、スリランカ以外2人)間の相互理解をはかり今後の共同研究を促進・加速するために、R4年6月から11月の間に5回、6人のメンバーによる発表および討議(オンライン研究会)を行った。具体的な日付、発表者(所属)、発表タイトルは本科研ウェブサイトを参照されたい。 第2に、現地調査および研究打ち合わせを行った。まず、研究代表者古田がスリランカに2度渡航し、R4年9月(17日間)には、北部州ジャフナ県で研究協力者のジャフナ大学S. Sivakanthan教授およびS. Dawson講師と共同で、障害のある子どもと成人の教育機関、福祉施設の訪問および教育事務所および関係者へのインタビューを実施した。続いて、中央州キャンディ県で研究協力者のP.Sethunga教授と共同で特別学校3校の訪問および関係者へのインタビューを実施した。次にR4年12月~R5年1月(12日間)には、研究協力者のA.Alwis教授(シンハラ語地域)およびS. Dawson講師(タミル語地域)と共同で、西部州カルタラ県および中央州ヌワラエリヤ県の公立学校における教員のインクルーシブ教育に関する意識に関するインタビュー調査を実施した。 一方、研究分担者川口および東田はそれぞれ本科研とは別の研究事業等によるスリランカ渡航の際に、本科研の関係者との対面による打ち合わせを行った。これにより、今後の共同研究の遂行に向け必要な討議を行うことができた。また、研究分担者中村は継続的にスリランカの研究者とオンラインミーティングによる研究打ち合わせを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1 本科研研究メンバー(国内4人、スリランカ5人、スリランカ以外2人)間の相互理解をはかり共同研究を促進するために、6月から11月の間に5回、6人のメンバーによる発表および討議(オンライン)を行った結果、国際共同研究に向けた自由討議から、共同研究で扱うべきテーマのいくつかを抽出することができた。これらのオンライン研究会には、スリランカ国内の研究者だけでなく、インドのU. U. Chakravarti教授およびイギリスのP.Lynch教授もほぼ毎回参加したことで、彼らから本国際共同研究の遂行に向けた貴重な助言を得ることができた。 2 研究代表者古田、研究分担者川口および東田はそれぞれ本科研とは別の研究や国際協力事業によりスリランカに渡航した際休日や夜間を利用して、本科研の関係者との対面による打ち合わせを行うことができた。これにより、今後の共同研究の遂行に向け必要な討議を行うことができた。 3 R4年度に発表した英語論文は、スリランカの文脈に沿ったソーシャルワーク(Higashida, 2022)、スリランカのケア(Nakamura, 2022)の2本であった。本科研に直接関係するテーマでは、スリランカのインクルーシブ教育政策、教員養成に関する研究論文をスリランカの共同研究者との共著で発行したが日本語であった。今後これらをさらに発展させ、国際共同研究の成果としていく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は残り3年間のうち特に重要な研究活動の時期に相当する。本研究は、分析枠組みを政策、教育・福祉実践、当事者・家族の3段階に分け、教育学の立場から川口が、福祉学の立場から東田が、人類学の立場から中村が研究調査を進め、研究代表者の古田がこれらを統括する。R5年度は、教育学で3回(政策、早期教(療)育、聴覚障害教育)、福祉学で1回、人類学で1回のオンラインによる国際シンポジウムを開催する。その際、これまで研究協力を行ってきたスリランカの5人の研究者に限定せず、海外在住のスリランカ人大学院生や研究者、その他教育・福祉現場の実践家の参加を得る。 また、それと同時進行で、国際共同研究の成果をさまざまな雑誌(スリランカ国内雑誌投稿、日本国内雑誌への英文論文投稿、国際学術雑誌投稿)、国際会議等で公開するための作業に傾注する。 具体的には、R5年度には、教育・福祉政策文書、中央政府・州社会事業局の施策の分析を行い国際共同研究の成果として公開する。加えて、①公立校・特別学校・教員養成校、 ②私立・インターナショナル校、民間新規職員養成校、療育施設、③北部復興地域における公立・私立校、障害児施設、④茶園地域の教育・福祉、⑤シンハラ農村等における既存の調査結果をまとめ公開するとともに、新たな調査を進める。 以上のように、スリランカ独自の包摂モデル構築に向けた国際共同研究を実施する。現在スリランカでは昨年度に引き続き経常赤字の拡大とインフレの加速が急速に進み、深刻な経済危機に直面している。このことが本科研の対象とする障害のある子どもとその家族にも大きな影響を与えることは間違いない。ポストコロナに加え、経済危機の渦中にあるフィールドに配慮しながら研究を遂行していく。現地渡航にあたっては万全の準備をして臨むこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍に考慮し渡航回数を制限したことによる。次年度、速やかに現地調査において使用する。
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備考 |
スリランカにおける障害児の教育的包摂:社会的文脈に即した包摂モデルの構築に向けて https://www.educational-inclusion-sri-lanka.com/index-e.html
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