研究課題/領域番号 |
21KK0041
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
平井 真洋 名古屋大学, 情報学研究科, 准教授 (60422375)
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研究分担者 |
浅田 晃佑 東洋大学, 社会学部, 准教授 (90711705)
木村 亮 京都大学, 医学研究科, 准教授 (20636641)
白野 陽子 慶應義塾大学, グローバルリサーチインスティテュート(三田), 特任助教 (20834154)
寺田 和憲 岐阜大学, 工学部, 教授 (30345798)
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研究期間 (年度) |
2021-10-07 – 2026-03-31
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キーワード | 自閉スペクトラム症 / ウィリアムズ症候群 / 疾患間比較 / 文化比較 / 社会性 / 発達 |
研究実績の概要 |
我々の文化・社会の基盤となるヒトの社会性には広がりがあり,社会的環境に影響されうる.本研究では,社会性が異なるとされる自閉スペクトラム症(ASD)児者ならびにウィリアムス症候群(WS)児者を対象に,社会的認知特性が文化的背景によりどのように異なるのかを,質問紙・実験心理学的手法を組み合わせて多角的に解明する.本年度は,日本における両群の感覚特性がどのように異なるかについて分析を行った.結果,全般的に両群において感覚特性が定型発達児者の範囲内に収まる割合は20-30%であり,両群において感覚特性の非定型性を確認した.両群の比較において,ASDとWS群で類似する結果がみられたものの,感覚過敏スコアについてはWS群においてASD群よりも有意に高かった.さらに発達に伴う変化についても検討した結果,感覚回避,感覚過敏において年齢に伴う変化を確認した.アイトラッカーを用いた注視行動を調べる研究においては,ASD児者・WS児者において当初の予想とは異なる結果が得られた.現在,その原因について解明するとともに,それを検証するための実験についても計画中である.ヴァーチャルリアリティ実験については,研究分担者との緊密な連携により,システム構築を進めた.構築したシステムの妥当性を検証するため,一般大学生を対象とした実験を行い,ヴァーチャルリアリティ空間内におけるアバターへの注視行動と対人距離の間に関係を見出した.現在,本結果の追試を実施し,結果の頑健性を確認するとともに,ウィリアムズ症候群児者を対象とした研究へと発展させている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画で検討を予定していた質問紙調査については進捗しているものの,新型コロナウィルス感染症の感染拡大により,対面による調査の進捗が当初の計画より遅れている.研究計画書に記載のヴァーチャルリアリティ実験については,研究分担者と連携しながらシステム構築を完了し,定型発達者(一般成人)を対象とした実験として実施中である.一連の研究によりヴァーチャル・リアリティ空間内のアバターに対する注視行動と対人距離の関係を見出しているものの当初の予定より遅れている.現在,結果の頑健性について再実験によって確認し,注視行動と対人距離の関係について関係について解明する.ヴァーチャル・リアリティシステムを用いたウィリアムズ症候群児者を対象とする準備を早急に完了し,調査を開始する.アイトラッカー実験の解析についてはほぼ終了しているが,当初の予定とは異なる結果が得られ,その原因の究明を早急に進める予定である.対面調査が可能になったことから,研究計画に記載の研究項目について迅速に遂行する.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度より開始したヴァーチャル・リアリティシステムを用いた調査をウィリアムズ症候群児者ならびに定型発達児者を対象に実施する.特に発達による注視行動の変化,対人距離の変化について着目した解析を行う.また,当初研究計画に記載した国際研究を実施するため,本研究費の共同研究者である英国ダラム大学のRiby教授を招聘し,研究打ち合わせを行う.日本側で構築したシステムを用いた調査を英国で実施するための手順について確認を進める.さらに英国のウィリアムズ症候群児者・自閉スペクトラム症児者を対象とした質問紙調査の結果を取りまとめるとともに,昨年度構築したヴァーチャルリアリティシステムを用いた対人距離に関する調査を英国において開始したい.さらに,研究計画で記載した実験についても刺激の作成と予備実験についても並行して進める予定である.また,質問紙調査,眼球運動解析データについても順次論文として取りまとめ投稿をおこなう.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症により開始できなかった対面調査をようやく開始することができたものの,当初の想定よりも進捗が遅れているため,次年度使用額が生じた.また,日本側でヴァーチャルリアリティシステムの構築ならびに当該システムの妥当性の検証に時間がかかり,当初想定していた英国での実験実施に必要な人件費を使用しなかったため,次年度使用額が生じている.次年度は英国の共同研究者との打ち合わせに関する旅費ならびに英国での実験に必要な人件費へと充てる予定である.
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