研究課題/領域番号 |
21KK0054
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
松浦 周二 関西学院大学, 理学部, 教授 (10321572)
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研究分担者 |
津村 耕司 東京都市大学, 理工学部, 准教授 (60579960)
佐野 圭 九州工業大学, 大学院工学研究院, 助教 (70802908)
高橋 葵 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(機構直轄研究施設), アストロバイオロジーセンター, 特任研究員 (70851848) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2021-10-07 – 2025-03-31
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キーワード | 宇宙背景放射 / 赤外線 / ロケット実験 |
研究実績の概要 |
我々は,NASAの観測ロケットを用いた国際共同実験CIBER: Cosmic Infrared Background Experiment により近赤外域の銀河系外背景放射を観測した結果,その強度と空間的ゆらぎが通常銀河の積算光から超過していることを発見した.この超過は未知天体の存在を示唆しており,宇宙初期の天体や近傍銀河のダークハロー浮遊星が起源の候補である.我々はCIBERより一桁高い感度で超過原因を特定しうる新たなロケット実験CIBER-2を計画し2021年6月に第1回の打上げ実験に成功した. 2022年度は,第1回実験において確認された観測装置に関する数々の課題を解決し第2回実験を実施した.第1回実験後から顕著になった望遠鏡の主副鏡の表面劣化は基材のアルミ合金上にコートした銀の劣化によるものと確認されたことから,主副鏡を再切削加工したのち,劣化が少ない銀合金を新たなコート材として施工した.フライト品へのコート施工に先立ち試作サンプルを用意し経時劣化を調べたところ,銀と比較して銀合金は劣化が少ないことを示した.日本で組立て調整した望遠鏡は,ロケット実験のとりまとめを行うロチェスター工科大学(RIT)へ輸送し,これを担当する日本チームが現地へ出向いてレンズ光学系や検出器と組合せ冷却光学試験を行った.様々な部品の遮光性能や検出器のノイズ性能を向上させ,すべての課題をクリアできたことから,第2回実験のためNASA Wallops Flight Facilityでの振動試験と総合動作試験を行ったのち,ホワイトサンズ実験場へ移動し,2023年4月に第2回の打上げを実施した.ところが,ロケット追尾に問題があり飛行停止措置がとられ,失敗に終わった.2023年度中に望遠鏡を再構築し2024年5月に第3回の打上げを実施するところまで実験を進めることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は第2回の打上げにおいてロケット追尾の不具合により失敗があったものの,早い段階で観測機器を改修および再構築することで第3回の打上げに臨むことができた.ロケット追尾の不具合は研究者側では如何ともし難い予測不可能な事態であったたため,これを研究の遅延とみなすことは正当ではない.観測機器の改修には研究代表者をはじめとし大学院生や学部生が日本から取りまとめ機関であるロチェスター工科大学へ出向き,現地での組み立てや実験の作業を主となって行った.この出張は本科研費により行ったが,このような不測の事態を想定していた出張予定も有効にはたらいた.2024年5月に第3回の打上げを行うことで本研究は実験としては一旦完了することができたことから,観測データの解析による科学成果の創出には至らなかったが,今後その期待がもてることでおおむね順調と言える.
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今後の研究の推進方策 |
前述のように,ホワイトサンズ実験場における第3回の打上げは2024年5月に実施する.今後はこの観測データを日米のメンバーで分担し解析を行い,近赤外宇宙背景放射のスペクトルと空間的分布から放射強度とゆらぎの超過の起源を探る.背景放射観測でしかできない天文学のフロンティアを開拓する.
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度中に第3回の打上げを行えるまで観測装置を仕上げたが,NASAによるロケットの打上げスケジュールに則ると2024年5月の打上げが決まったため,その打上げのための出張旅費を次年度使用分として確保する必要があった.次年度使用額は,第3回の打上げ出張費として使用する予定である.
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