研究課題
大量のマグマを地表へ噴出し地表環境を劇的に変化させる巨大カルデラ噴火は,発生の頻度は低いが将来も発生しうる。カルデラ噴火では,ほぼ固結し流動性を失ったマグマが噴出することがある。冷たい地殻内部で大量のマグマが形成される過程では,マグマが冷却し結晶化が進み,必然的にクリスタルマッシュが形成される。本研究はマグマ中に存在する気泡がクリスタルマッシュを流動化させ,その結果地表へマグマが上昇可能になるという説を検証するために,カルデラ噴火の噴出物解析,クリスタルマッシュの流動化実験,さらに流動のモデル化を行うことを目的としている。昨年度までの研究で、減圧率が高い場合に気泡がマグマ流動化を引き起こす一方で、減圧率が小さい場合や段階的に減圧が進む場合には形成された気泡がマグマから分離してしまい流動化しないことが分かった。本年度は、流動化過程を詳細に調べるためにアナログ実験を行った。その結果、気泡が保持され流動化するケースと気泡分離が進むケースを分岐する素過程は、気泡膨張の遅れとそれに伴う新しい気泡の核形成の発生であることが分かった。つまり、高減圧率では気泡成長が遅れて過飽和度が高まり新しい核形成が進む。気泡同士の合体成長には時間がかかるため気泡は孤立しており分離できない。一方で、低減圧率では気泡はクリスタルマッシュの隙間へ成長し分離することが可能となる。これらの実験的結果をモデル化し、実際のカルデラ噴火の条件(減圧履歴や減圧速度)を比較すると,多くのカルデラ噴火において気泡分離は起こらないことが示唆された。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)
Journal of Volcanology and Geothermal Research
巻: 439 ページ: 107844~107844
10.1016/j.jvolgeores.2023.107844