研究課題/領域番号 |
21KK0056
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
吉川 一朗 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (10311169)
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研究分担者 |
野澤 宏大 鹿児島工業高等専門学校, 一般教育科, 教授 (60398914)
桑原 正輝 立教大学, 理学部, 助教 (60827575)
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研究期間 (年度) |
2021-10-07 – 2027-03-31
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キーワード | ベッピコロンボ計画 / 紫外線観測機 / 水星大気 / ナトリウム大気 / 太陽系内惑星探査 |
研究実績の概要 |
BC計画は、ESAとJAXAが協働して2つの探査機を水星周回軌道に送り込む計画である。本研究チームは、探査機「みお」に搭載したナトリウム大気カメラと探査機MPOに搭載された紫外線分光器の開発を行ってきた中核メンバーと、その技術を将来担う若手研究者からなる。探査機の水星到着を待つばかりである。 科学計測を行う場合、打ち上げ後の観測機の性能を把握するのは困難である。衛星の総合試験や射場での待機時間に1年以上の歳月がかかり、無重力・真空での動作を前提とした探査機搭載機器はこの間に性能が劣化するものも少なくない。この問題に対して、欧州では、打ち上げ後の機器較正実験プログラムを立ち上げ、将来取得する科学データの質の向上と同時に若手研究者への技術情報のOJTを行っている。我々は、フライトモデル同等品を用いて観測値の軌正を行い、2025年以降に取得される科学データ処理に反映することを目指す。 観測機設計を担当した吉川、FM開発を先導した村上と吉岡、野沢ならびに観測機の開発技術を引き継ぐ後継者 桑原と大学院学生が東京大学柏キャンパス、立教大学、鹿児島高専、JAXA(宇宙研)を往来し、物品の調達状況、動作確認、欧州での試験手順案を作成した。2023年度には、紫外線分光器の協働開発国であるフランスと協力し、観測機の性能評価モデルを完成させ、機器の性能変化を調査する予定である。欧州で行う試験の予行を、国内の放射線施設である分子科学研究所において合計3回行った。ここでは、紙面では見えにくい試験手順の矛盾を見つけるだけではなく、トラブルに対する急な対応をOFT的に大学院生たちに教授することができ、教育効果が高かったと自負している。 大学院学生に米国での打ち合わせに参加させ、試験手順の説明と問題点の解決を欧米の研究者と行い、来年度の実験に備えるだけではなく人事交流も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
未だコロナ禍の影響が残る2022年であったが、海外研究者とは主にオンライン、国内研究者では対面で準備を進めることができた。ほぼ完ぺきとも思える準備が整っているため、2023年度はその実行に移したい。博士課程を修了した若手ポスドクをLATMOSに常駐(別予算)させ、既に計画は実行中である。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度に6名が光検知装置1台をフランスに輸送し1週間(w) ×2回滞在をする計画である。較正実験は、光強度が高いソレイユ放射光施設(フランス)でも行う。ここで得られる情報は、探査機から得られるデジタルデータから物理量(Rayleigh)への変換を正確に行うために必要である。電磁励起された気体が発する光を用いるLATMOS研究所での実験は光が弱く、総合試験には不向きな実験もある。2023年度は、ソレイユ放射光施設の規定に従い利用ガイダンスの受講後から、実験を行う(6名x2w)。フランスの放射光施設では効率よく実験を進める必要があるため、国内(愛知県岡崎市分子科学研究所)にて4名×1wの日本チームのみで教育のための練習を実施し、フランスでの実験 手順を確認する。研究代表者チームは分子研での実験実績があり、治具準備、輸送手配や書類作成などの準備が整っている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響のため、欧州での実験計画を1年延期したため。2023年度早々に実施する予定である。欧州でのコンテナ発送の後、コンテナの追加購入、改修を行うため、物品費の使用計画に変更が生じた。遅延に関する来年度以降の計画見直しのために、国内旅費が増加した。
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