研究課題/領域番号 |
21KK0058
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
横山 哲也 東京工業大学, 理学院, 教授 (00467028)
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研究分担者 |
羽場 麻希子 東京工業大学, 理学院, 助教 (30598438)
深井 稜汰 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 特任助教 (10848469)
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研究期間 (年度) |
2021-10-07 – 2026-03-31
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キーワード | はやぶさ2 / リュウグウ / C型小惑星 / サンプルリターン / 同位体分析 |
研究実績の概要 |
はやぶさ2初期分析化学班として、リュウグウ試料および関連する隕石の化学分析および同位体分析を継続した。一連の分析により、リュウグウがCIコンドライトに似た化学組成・同位体組成を持つことが明らかとなった。2022年6月には研究代表者を筆頭著者とした初期分析に関する最初の論文がScience誌に掲載され、大きなインパクトを与えた(Yokoyama et al., 2022)。さらに、リュウグウ初期分析化学班からFe同位体に関する論文(Hopp et al., 2022)、Ca同位体に関する論文(Moynier et al., 2022)、Zn-Cu同位体に関する論文(Paquet et al., 2022)がいずれも著名な国際誌に掲載された。Fe、Ca、Zn-Cu同位体分析に用いられたリュウグウ試料は、全て研究代表者が開発したマルチ元素分離技術を適用して分離抽出したのち、国外の共同研究者に送られたものである。このほか、本研究課題の海外研究協力者が所属するメリーランド大学、カーネギー研究所、およびスイス連邦工科大学チューリッヒ校に送付した試料の同位体分析も順次行われた。カーネギー研究所で行われたSm-Nd同位体分析の結果は論文としてまとめ、国際誌MAPSに投稿済みである。メリーランド大学で行われたMo同位体分析については学会発表を終え、論文投稿目前である。また、スイス連邦工科大学で行われたZr同位体分析についても、今夏に学会発表を予定しており、順調に成果が出ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上記の通り、リュウグウ初期分析に関しては予想を上回るペースで論文を公表できている。Science誌を筆頭に、Science Advances誌, Nature Astronomy誌など、トップレベルのジャーナルに掲載され、研究分野を超えて大きなインパクトを与えている。また、本研究経費の一部を使って導入したトリプル四重極ICP-MSは順調に稼働しており、立ち上げた微量元素分析法はリュウグウ試料や隕石試料の分析において不可欠な存在となっている。また、微量元素に加え、隕石の主成分元素の分析も立ち上げに成功した。このように、本研究課題は当初の計画以上に進展しているといえる。なお、2022年度も新型コロナウイルスの蔓延が収まらなかったため、研究代表者および分担者が海外研究機関に直接渡航して共同研究を実施することはできなかった。この点は2023年度に改善されると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
2023年2月、本研究課題の代表者をPI、分担者2名をCo-Iとしたリュウグウ試料の国際公募(第2回AO)が採択され、新たにリュウグウ試料8点が分配された。今後はこれら試料の元素存在度および同位体分析を実施する。特に着目しているのは、リュウグウの水質変成によって生じた二次鉱物とリュウグウの同位体組成変動の関係である。予察的な分析により、二次鉱物のドロマイトとマグネタイト、硫化物が多いリュウグウ試料とそれら鉱物が少ない試料とでは、核合成起源54Cr同位体異常の程度に大きな違いがあることがわかってきた。AO試料を用いた分析では、この点に着目していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度内に分担者が海外研究機関に渡航し、先方の装置などを用いた国際共同研究を実施する予定であった。しかし、新型コロナウイルスの蔓延が収まらず、渡航そのものを延期する必要が生じた。海外研究機関への渡航は2023年度内に実施する予定である。
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