研究課題/領域番号 |
21KK0074
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
前田 匡樹 東北大学, グリーンクロステック研究センター, 教授 (30262413)
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研究分担者 |
楠 浩一 東京大学, 地震研究所, 教授 (00292748)
SHEGAY ALEKSEY 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 研究員 (90866170)
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研究期間 (年度) |
2021-10-07 – 2025-03-31
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キーワード | 次世代耐震性能設計 / 修復指標 / 構造性能 / 修復費用 / 経済損失 |
研究実績の概要 |
本研究では、補修性指標に基づく設計法・性能評価法を開発し、日本及びNZの両国に加えて、世界の建築物へ展開することを目標としている。 そのために、① 補修による構造性能の回復度の定量評価(Capacity)、② 補修方法と復旧費用の関係の評価(Cost)、③ 地震被害による経済的損失の評価(Loss)に関して、過去の実験や地震被害データを収集・分析し、それらを総合して、④ 復旧に投資する費用の合理的評価と修復性指標の開発(Repair Index)を開発することを目標としている。 2023年度は、カウンターパートであるオークランド大学に渡航し、新設梁部材の静的載荷実験を4月~5月に、梁部材の補修を6月~7月に実施した。さらに補修した梁部材の振動台実験の計画について、カウンターパートと議論し、12月~2024年2月にかけて実施し、補修の効果に関する実験データを取得することができ、大きな成果を得ることができた。 これにより、東北大学、オークランド大学の双方で作業を進めた、損傷が生じたRC部材の補修により構造性能回復(Capacity)を評価するためのデータベース構築について、データを充実させることができた。 さらに、復旧費用(Cost)及び経済損失(Loss)については、米国FEMAの指針を用いて、評価する枠組みについて検討し、モデル建物について修復性指標(Repair Index)を試算して、その有効性を確認するとともに、評価の方向の議論を深めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験作業が本格化したことから、2022年4~5月及び2023年12月~2024年2月にかけて、研究代表者・前田が2回、前田研究室の大学院生3名が合計5回、NZへ渡航し、実験準備、実験の実施、データの分析、Repair Indexの評価法の検討など、オークランド大学のカウンターパートと、緊密に連携しながら実施することができており、学術論文などの成果も出始めている。
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今後の研究の推進方策 |
① 補修による構造性能の回復度の定量評価(Capacity):部材種別、破壊モード、損傷程度、補修方法と構造性能などのパラメータを分析し、補修の効果を定量化し建物の構造性能回復を評価するためのデータベースを構築する。2023年度にオークランド大学で実施した梁部材の静的載荷実験・振動実験結果も含めた構造性能回復データベースをさらに拡充させる。 ② 補修方法と復旧費用の関係の評価(Cost):日本、NZの両国の典型的な構造部材、非構造部材、設備機器の損傷度及び補修方法と補修費用の関係を調査する。NZの2011年クライストチャーチ地震、2016年カイコウラ地震、日本の2011年東日本大震災、2016年熊本地震などの過去の地震被害の復旧過程の情報を調査し、建物の補修方法・補修後の性能と復旧費用の関係を明らかにする。米国FEMAのP-58 Performance Assessment Calculation Tool (PACT)を用いて、様々な建物に適用して評価する方法を開発する。 ③ 地震被害による経済的損失の評価(Loss):建物の復旧に要する工事費用、復旧期間における事業停止・利用停止等による経済的損失について、機能停止期間(ダウンタイム)を特定し、経済的損失を評価するモデルを開発する。 ④ 復旧に投資する費用の合理的評価と修復性指標の開発(Repair Index):②③の成果に基づいて、性能・費用・経済的損失等の複数の要素を組み合わせた修復性指標(RI)を地震被害事例データベースに適用して、被災建物の補修/建替の判断を合理的に行うためのクライテリアを設定する。 ⑤ 補修性指標に基づく設計法・性能評価法への展開(Design):④で開発した修復性指標を用いて「修復性」を考慮する修復性評価設計の共通モデルコードを作成し、米国ATC145などの海外の設計法への展開を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
2024年4月にウェリントンで開催される会議NZSEEへの出張を予定しており、その旅費に充てるため
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