研究課題
日本及びニュージーランドは火山国で、火山防災研究への期待が大きい。2014年御嶽山噴火、2018年本白根山噴火、2019年ニュージーランド・ホワイト島噴火は、水蒸気噴火であり、数多くの犠牲者・被災者を出した。水蒸気噴火は、現状ではその前兆を捉えることが困難である。これは、火山体に広がる熱水やガスの分布する構造やその時間変化が、地震や測地の観測から捉えることが難しいことによる。一方、比抵抗は熱水やガスの分布に敏感な物理量であるため、人工電磁場を用いることによって、熱水やガスの分布の時間変動を検知することができる。申請者は、高精度に制御された人工的な周波数コム電磁信号源を用いて、火山体を精密にモニタリングするシステムを構築中である。ニュージーランド国ワイマング地熱地域のインフェルノ火口湖は短期間に湖面が10m上下することが知られており、同システムによるモニター観測に適している。そこで、ニュージーランドのGNS Scienceの研究者と共同して観測を行い、火口湖の熱水系の時間変動を捉える観測を実施する。また共同研究を通じて、精密周波数コム電磁モニタリングシステムに関して、観測方法や解析ソフトウエアの高度化をはかる。今年度は、現地観測の準備として、現地の共同研究者と実際に現地の予察を行い、送信信号装置や観測点の配置の検討および現地での立入許可の申請を開始する予定であった。ところが、新型コロナウイルスの感染拡大のために日本からの渡航が困難でとなった。そこで、共同研究者の協力を仰いだ。観測ターゲットとなるの地元の土地所有者に実験内容を説明することにより、観測に関して基本的な協力を得ることに成功した。実際の人工電磁信号の観測に関しては、ニュージーランド国GNS Scienceと東京工業大学では同一の測定装置を有することから、時系列解析ソフトウエアに関する情報交換を行った。
3: やや遅れている
新型コロナウイルスの感染拡大のためにニュージーランドに渡航できず、現地観測のための準備がやや遅れている。しかしながら、ニュージーランドの共同研究者のサポートによって、観測実験に関して地主の基本的な協力を得ることに成功した。データ解析に関しては、ニュージーランド側と、東工大で同一の観測機材を有しているために、ソフトウエアの交換を行うことができた。観測データから比抵抗モデルを解析するプログラムについては、逆問題を解析する差分法のプログラムは完成しており、蒸気層が発生することによる高比抵抗化を捉えられることを示した。
2022年度は、現地予察ののちに具体的な送信ダイポール位置および観測点の配置について決定する。実際の実験観測は、2023年1月から3月に予定している。また実際のニュージーランドでの観測に先立って、すでに東京工業大学が草津白根火山を対象として行っている同様の観測研究について、その観測データを共有することによって、データ解析手法の改良と確立を目指す。
新型コロナウイルスの感染拡大によって、ニュージーランドに渡航して予察を行うことができなかったため、予算を大幅に繰り越すこととなった。次年度に繰り越して、現地の予察に使用する予定である。
すべて 2022 2021 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 5件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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