研究課題
昨年度対象としたヨウ化物に加えて今年度は臭化物と塩化物を対象としたハロゲン化物ナノ構造化シンチレータ結晶材料を作製するために、希土類ハロゲン化物(REI3、REBr3、RECl3)とアルカリドル金属ハロゲン化物(AEI2、AEBr3、AECl3)の状態図作製を行った。各状態図において共晶点組成を明らかにするとともに、共晶点組成において共晶体構造を利用したナノ構造化シンチレータ結晶の作製を行った。さらに、高融点シンチレータ単結晶材料探索に向けた結晶育成技術を確立し、W坩堝と脱酸素断熱材を用いることで、2200℃を超える複数の酸化物単結晶育成に成功した。さらにハロゲン化物ナノ構造化シンチレータ結晶材料のX線イメージング特性評価に向けて、室内露点温度-30℃以下で作業を行えるドライルーム内に、新たにX線励起蛍光スペクトル測定セットアップを構築し、ハロゲン化物を用いて蛍光スペクトルの測定を行った。また、ナノレベル共晶体ハロゲン化物結晶を用いた評価に先駆けて、今年度はナノレベル共晶体酸化物結晶を用いて、X線イメージング試験を実施した。機械学習の開発項目では、昨年度実装したベイズ最適化法のアルゴリズムを改良し、大規模データを読み込ませた際の読み込み負荷を低減するとともに、複数コアのCPU演算器で並列処理を実行できるようにした。これにより、大規模データの学習プロセスを高速化して、シンチレータ特性の発光強度、寿命、波長などを説明するためのモデル生成、ならびに、より特性の高いプロセスパラメータの推論を効率的に行うことを可能とした。
1: 当初の計画以上に進展している
これまでの研究によって、複数のナノ構造化シンチレータ結晶の作製・発光特性評価を実施できている。高融点シンチレータ単結晶の作製手法も確立し、複数の2200℃の融点を超える酸化物単結晶材料の作製も成功している。X線イメージング特性評価や機械学習の研究も予定通り進んでおり、当初の予定以上に進展していると判断した。
ナノ構造化シンチレータ結晶の作製・発光特性評価をさらに進めるとともに、高融点シンチレータ単結晶の作製・評価も行う。X線イメージング特性評価に関しては、本年度開発した測定技術をナノレベル共晶体ハロゲン化物結晶に適用して研究を進める。機械学習による材料設計のためのデータベース構築も順調に進んでおり、来年度は信頼性のあるビッグデータによる機械学習の実施を目指す。
昨年度同様、今年度もコロナ禍のため、予定していた国際共同研究機関であるチェコ物理研等への出張が制限されており、予定していた旅費を使用できなかった。そこで、来年度にそれらの出張を延期したため、その出張費を繰り越すこととした。
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Japanese Journal of Applied Physics
巻: 61 ページ: 072002~072002
10.35848/1347-4065/ac7271