研究課題/領域番号 |
21KK0091
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
奥野 将成 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (00719065)
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研究分担者 |
成田 明光 沖縄科学技術大学院大学, 有機・炭素ナノ材料ユニット, 准教授 (30870133)
大戸 達彦 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (90717761)
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研究期間 (年度) |
2021-10-07 – 2025-03-31
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キーワード | グラフェンナノリボン / 分子分光 / 量子化学計算 |
研究実績の概要 |
初年度はほぼ計画通りの研究を行うことができた。実施した内容は以下のとおりである。 (1) 多波長での測定が可能な顕微ラマン分光装置を構築した。671 nmおよび785 nmのレーザーを新規に導入することで、従来保有していた532 nmに加えて、さらにこれら二波長での顕微ラマン分光測定を可能にした。これによって、電子二重共鳴効果による、グラフェンのラマンバンドのピーク位置のシフトなどの詳細な検証を行うことが可能になった。また、蛍光性の分子試料についてもさまざまな波長によるラマン測定の試行が可能になった。 (2) グラフェンナノリボンおよびその構成分子のラマン測定を行った。新奇グラフェンナノリボンを合成するための原料分子について、ラマン測定を行い、良好なラマンスペクトルを得ることに成功した。10種類を超える分子について、極少量(< 1 mg)あればラマン測定が可能であることを示した。特に、532 nmでは蛍光が強くラマン信号が埋没してしまった試料についても、より長波長の671 nm励起によってラマン信号を得ることができた。これは、(1)で多波長顕微ラマン分光装置を構築したことにより、信号取得が可能になったといえる。分子構造のわずかな違いにより、蛍光の大きさおよびラマンシフトが誘発されることを見出し、今後の構造解析についての情報を得ることができた。また、金属基板上のグラフェンナノリボンについても、十分な信号ノイズ比でラマン測定が行えることを示した。詳細については現在解析中であるが、試料の状態を反映して異なったスペクトルを得ることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍のため、共同研究先へと海外渡航を行って研究を行うことはできなかったが、国内ではそれぞれのグループが順調な研究を行えたといえる。特に、構造解析の基盤となるラマン分光装置を実際にグラフェンナノリボンへと適応することができたため、おおむね研究は順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
継続して国内の共同研究を推進し、新奇グラフェンナノリボンの合成とその分光学的な測定、さらにスペクトルを量子化学計算に基づいて解析し、その構造解析を行う。また、コロナ禍が落ち着いたタイミングで国際共同研究先へと渡航し、新奇分子の測定を含めた共同研究を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により国際共同研究先へと渡航し、現地での研究ができなかったことが大きい。コロナ禍が落ち着いてきているため、2年次以降に繰り越した助成金を用いて国際共同研究先へと渡航し、充実した共同研究を実施する。
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