研究課題/領域番号 |
21KK0096
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
磯野 拓也 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (70740075)
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研究分担者 |
田島 健次 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (00271643)
佐藤 敏文 北海道大学, 工学研究院, 教授 (80291235)
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研究期間 (年度) |
2021-10-07 – 2025-03-31
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キーワード | バイオベース高分子 / 多糖 / オリゴ糖 / ブロック共重合体 |
研究実績の概要 |
本研究は、日仏台の3か国共同体制によって、糖鎖をバイオベース原料ならびに機能発現部位として活用することで、高強度・高靭性バイオベース高分子材料を創出することを目的としている。本年度は下記について主に検討を行った。 ①相溶化剤としての応用:昨年度までの検討により、ABAやA2BA2型(Aブロック=アセチルセルロースオリゴ糖、Bブロック=ポリカプロラクトン(PCL))が酢酸セルロース(CTA)/PCLブレンド系に対して優れた相溶可剤となることを見出していた。引張試験から、相溶化剤を添加したブレンドは高いヤング率を示すという興味深い結果を得た。熱分析とX線回折を行ったところ、相溶化剤の添加によってCTAとPCL両方の結晶化度が向上することがわかり、その結果としてヤング率が向上したと考えられる。また、ブレンドのモルフォロジーを評価したところ、予想に反して、相溶化剤の添加はPCLドメインの微分散化にほとんど寄与しないことがわかった。したがって、力学特性が向上した要因はPCLドメインの微分散化ではなく、界面の接着性向上が大きく寄与していると考えられる。 ②PCLの物性改善への応用:PCLとオリゴ糖からなるブロック共重合体をPCLへ添加することで、力学強度に劣るPCLを強靭化する試みを行った。PCL/ブロック共重合体の二元系ブレンドを調製し、引張試験を行ったところ、オリゴ糖の重量分率がわずか1~2%程度にもかかわらず、PCL単体に比較してヤング率や降伏応力が向上することが判明した。 以上に加えて、海外共同研究者であるBorsali(フランス)、Chen(台湾)およびChiu(台湾)らそれぞれとオンラインまたは対面でミーティングを開催した。また、Chiuらのグループに学生を派遣し、関連実験を行った。さらに、Borsaliが所属する研究機関に博士課程学生とともに滞在し、関連の実験を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の主なターゲットであった糖鎖ベースブロック共重合体によるバイオベースエラストマーの創出にとどまらず、多糖樹脂に対する相溶化剤や生分解性樹脂の物性向上剤としての応用の可能性を見出した。また、海外共同研究者との共同研究も進み、複数の論文執筆に向けて議論を進めている。以上より、当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの検討においては、オリゴ糖鎖としてマルトオリゴ糖かセルロースオリゴ糖、ソフトセグメント鎖としてポリカプロラクトンかポリデカノラクトンを用いていたが、今後はそれらの範囲を広げ、多様な組み合わせのブロック共重合体の合成・材料応用を検討する。また、得られた材料の生分解性評価も進め、材料物性と生分解性の両立が可能な材料設計指針を導く。
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