研究課題/領域番号 |
21KK0098
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
鳴瀧 彩絵 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (10508203)
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研究分担者 |
高橋 倫太郎 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (10794125)
舘野 道雄 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任助教 (20868468)
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研究期間 (年度) |
2021-10-07 – 2025-03-31
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キーワード | 水浄化材料 / ナノ粒子 / ベシクル / 自己組織化 / 表面処理 |
研究実績の概要 |
本研究では,分子スケールからミリメートルスケールにわたる4段階の階層構造を有する機能性多孔体からなる水浄化材料を開発する.コアとなる技術として,シリカナノ粒子(Silica Nanoparticle, SNP)の液相自己組織化によるベシクル構造の形成を利用する. 2021年度は,SNPの液相自己組織化のダイナミクスを,小角X線散乱法(SAXS)により調べた.粒径15 nmのSNPと,ポリプロピレンオキシド(PPO)とポリエチレンオキシド(PEO)のブロック共重合体である PPO20-PEO30-PPO20 (Pluronic 25R4)を水中,等重量で混合し,温度応答性高分子であるPluronic 25R4が疎水性を示す90℃に加熱してSAXS測定を行ったところ,室温から加熱後30秒でシリカナノ粒子が凝集し,数分で平衡構造に達することがわかった.サブミリメートルスケールの細孔を有する直径約1 cm角のポリウレタンスポンジ(PUS)の存在下,110℃の水熱条件下でSNPをPluronic 25R4と共に自己組織化させたところ,ポリウレタンスポンジへシリカナノ粒子ベシクル(Silica Nanoparticle Vesicle, SNV)を担持することができた.SNVはPUSスポンジの内部表面にも担持されていた.このPUS-SNV複合体は,PUS単体に比べて大きな比表面積と,鉛イオンに対する高い吸着能を示した.しかしながら,PUS-SNV多孔体への通水により,SNVが一部脱離する様子が観察された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Covid-19の影響で,当初計画していたスウェーデンへの渡航は叶わなかったが,Bjork博士とはメールおよびオンライン会議を介して研究の遂行に必要な研究打ち合わせができた.サンプルを航空便にてリンショーピン大学に送付し,Bjork博士がKr吸脱着測定による比表面積の測定を実施した.SAXS測定からは,これまでブラックボックスであったSNP自己集合過程の一端が明らかになり重要な成果と言える.PUS-SNV多孔体からのSNVの脱離は想定内であるため,研究遂行上の問題はない.
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今後の研究の推進方策 |
PUS-SNV多孔体の機械的安定性を向上させるために,PUSの表面処理を実施し,PUSとSNVを共有結合させる.機械的強度を向上させたPUS-SNV多孔体について,構造のキャラクタリゼーション(走査型電子顕微鏡による観察や比表面積測定)と無機イオン吸着能の評価を再実施する.さらに,バクテリアの吸着に適したSNV表面を創出し,バクテリア吸着能を評価する.より長時間のSAXS測定を行い,ブロック共重合体の存在下におけるSNP自己集合のメカニズムを解明する.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由:Covid-19の影響で相手国への渡航ができなかったため 使用計画:研究の遂行に係る消耗品費
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