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2021 年度 実施状況報告書

難培養性シアノバクテリア由来新規天然有機化合物の探索・合成展開による創薬基盤構築

研究課題

研究課題/領域番号 21KK0099
研究機関筑波大学

研究代表者

吉田 将人  筑波大学, 数理物質系, 准教授 (80511906)

研究分担者 岩崎 有紘  慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 助教 (00754897)
植草 義徳  慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 助教 (30753024)
研究期間 (年度) 2021-10-07 – 2025-03-31
キーワードシアノバクテリア / ペプチド / 海洋天然物 / 熱帯病
研究実績の概要

本研究では、シアノバクテリアから生産される生物活性天然物、特にペプチド系化合物に焦点をあて、米国カリフォルニア大学Gerwick教授との国際共同研究の推進を通じて、海外原産難培養性シアノバクテリアの培養方法の確立、および生物活性天然物の探索、有機合成化学による誘導体合成法の確立と構造活性相関研究へ展開することで、リード化合物創出のブレークスルーとなり得る創薬基盤の構築を目標としている。令和3年度は難培養性シアノバクテリア由来の天然物の単離、合成について検討し、以下にその概要を示す。
・抗リーシュマニア活性を示す鎖状リポペプチドviridamide類の全合成を検討し、Gerwickらによって提唱された構造に誤りがあることを明らかにした。構造改訂に向けて異性体の合成を進めた結果、構成アミノ酸の立体配置に誤りがあることを見出したが、依然として天然物とNMRスペクトルが一致しないことがわかった。構造決定および構造活性相関研究に向けて、多様性指向型合成法の確立を検討している。
・Gerwick研との共同研究によって構造活性相関を明らかにした抗トリパノソーマ活性をもつペプチド性天然物Iheyamide類について (J. Nat. Prod. 2021, 84, 2587.)、全合成を通じて本化合物の量的供給を達成した。さらなる生物活性を明らかにするために、合成品をもちいてエボラ出血熱とCOVID-19を対象としたウイルス感染阻害活性試験を検討している。
・海洋シアノバクテリア抽出物に含まれる化合物群の分子ネットワークを構築した。この分子ネットワークを手がかりとして新規化合物を単離し、honuaiakeamide類と命名した4種の平面構造を決定した。さらに、このシアノバクテリアのゲノム解析によって予測された生合成遺伝子クラスターの一つが、これらhonuaiakeamide類の生合成を担っていることを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

・Viridamide類の作用機序解明に向けて、合成経路を確立することができたが、天然物の構造に誤りがあることが明らかとなった。この構造決定に向けて、Gerwick研での再培養による天然物の取得、および異性体の合成を進めている。
・新たにエボラ出血熱とCOVID-19を対象とした抗ウイルス活性の評価が可能となった。これらの評価系を用いて、複数の新規天然物の評価が進行中である。本研究がカバーする疾病領域が広がることで、より多様な創薬シード天然物の発見が期待される。また海洋シアノバクテリアの培養環境の構築に向けて振とう培養器を導入し、培養条件の予備検討を行っている。
・分子ネットワークを駆使した天然物の網羅的探索法がうまく機能しており、海洋シアノバクテリアの培養株より、新規化合物の発見およびそれら生合成遺伝子クラスターの解析が順調に進んでいる。さらに、このシアノバクテリアから単離されている既知化合物の類縁体も複数発見することができている。しかし化合物の収量が少ないことから、生物活性試験には至っていない。

今後の研究の推進方策

・再培養によりviridamide類が取得できた場合には、NMRによる構造解析により平面構造を改めて決定する。また、異性体合成を進めることで得られる化合物については、抗リーシュマニア活性などの評価を検討する。さらにDP4解析などペプチド系化合物の構造予測手法を検討し、実際に合成を検討することでその精度を検証する。
・Iheyamide類が抗ウイルス活性試験で有望な結果を示した場合は、確立した全合成ルートを用いて人工類縁体を調製し、構造活性相関を明らかにする。
・Honuaiakeamide類の絶対立体配置をスペクトル解析および天然物化学的手法により決定するとともに、生物活性試験に必要な量を再培養により確保する。また、同位体標識した栄養源を用いて培養することにより、honuaiakeamide類の生合成に用いられる開始基質を明らかにする。さらに、分子ネットワーク解析によって示唆されている他の新規化合物の発見を目指す。
・天然物探索については、Gerwick教授と共同でカリブ海でのサンプル採集を実施し、入手したサンプルに含まれる新規生物活性天然物の探索を行う。有望な天然物を生産するシアノバクテリアについては、培養法の検討を行う。

次年度使用額が生じた理由

コロナウイルス感染症の影響により渡航できなかったこと、試薬および消耗品の輸入に際して航空便の遅延等により納品が遅れたため繰越金が生じた。
状況を見極めて、早めの試薬・消耗品の購入を検討、また複数回渡航して相手先で共同研究を実施することを計画している。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2022 2021 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 学会発表 (4件)

  • [国際共同研究] University of California, San Diego(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      University of California, San Diego
  • [国際共同研究] Ningbo University(中国)

    • 国名
      中国
    • 外国機関名
      Ningbo University
  • [学会発表] 細胞毒性天然環状デプシペプチドLagunamide Cの全合成研究2022

    • 著者名/発表者名
      萩元 海月、吉田 将人、木越 英夫
    • 学会等名
      日本化学会第102春季年会
  • [学会発表] 分子ネットワーク解析を活用した海洋性シアノバクテリア由来新規化合物の効率的探索2022

    • 著者名/発表者名
      小川慧人,植草義徳,木内文之,William H. Gerwick,菊地晴久
    • 学会等名
      日本薬学会第142年会
  • [学会発表] 新規ペプチド-ポリケチドハイブリッド配糖体 iezoside の構造と生物活性2021

    • 著者名/発表者名
      栗澤 尚瑛、岩崎 有紘、寺沼 和哉、旦 慎吾、豊島 近、橋本 勝、末永 聖武
    • 学会等名
      第63回天然有機化合物討論会
  • [学会発表] 分子ネットワークを用いたシアノバクテリア由来の新規化合物の単離2021

    • 著者名/発表者名
      小川慧人,植草義徳,木内文之,William H. Gerwick,菊地晴久
    • 学会等名
      第65回日本薬学会関東支部大会

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公開日: 2023-12-25  

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