研究課題/領域番号 |
21KK0106
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
木下 こづえ 京都大学, 野生動物研究センター, 助教 (50724233)
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研究分担者 |
早川 卓志 北海道大学, 地球環境科学研究院, 助教 (00758493)
小倉 匡俊 北里大学, 獣医学部, 講師 (30723564)
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研究期間 (年度) |
2021-10-07 – 2027-03-31
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キーワード | 生息域内外保全 / ゲノム多様性 / ホルモン分析 / 繁殖管理 / 社会性 / 行動分析 / 腸内細菌叢適応 / オーストラリア |
研究実績の概要 |
豪州も日本も、世界屈指の固有哺乳類の宝庫でありながら、その25%~40%の種の絶滅が危惧されている。本研究では、分子から、細胞、生理、行動、生態までのあらゆる階層で、哺乳類の保全生物学を実践してきた日本人研究代表者らが、豪州の保全生物学のエキスパートと国際共同で研究チームを作った。豪州と日本の固有哺乳類について、野外生息地(域内)保全と飼育下(域外)保全を同時におこない、新しい比較保全研究のスタイルを確立することを目的としている。 本年度は、主に国内の飼育動物を対象に、ゲノム解析、ホルモン分析、行動観察を実施した。 ゲノム解析では、名古屋市東山動植物園のコアラを対象に全ゲノム解析をおこなった。ユーカリ餌の選好性の個体差に対応すると思われる一塩基変異を検出した。また、シドニー大学のKathy Belov博士のグループと共同で、シロアリ食者であるナンバット(フクロアリクイ)の全ゲノム解析をおこない、ナンバットのシロアリ食に関する適応的な遺伝子の候補を同定した。シドニー大学・アデレード大学とオンラインで共同研究を実施し、有袋類や単孔類における感覚受容体遺伝子の分子進化について分析した。ホルモン分析では、コアラのストレスに関連して変動するとされているコルチゾールの濃度を尿を用いて測定し、ストレス事象との関連性を明らかにした。採食や求愛行動などの行動観察については、鹿児島市平川動物公園で飼育されている個体を対象に実施した。採食する餌(ユーカリ葉)の種類を個体ごとに記録したところ、餌の好みに個体差はありつつも、全体としての好みの傾向があることが明らかになった。また、名古屋市東山動植物園のハリモグラの飼育室に定点カメラを設置し、24時間の行動を記録した。ハリモグラのエソグラム(行動目録)を作成するとともに、行動パターンを分析したところ、昼時間も夜時間も同程度活動していることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染症拡大防止措置により、オーストラリアに渡航して試料分析を実施するには至らなかったが、国内の飼育個体サンプルを使用して計画通りの分析を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、日本およびオーストラリアの双方の研究成果を照合して、動物種の違い、および環境差(野生および飼育環境など)についての考察を深める。 また、相手国への渡航を計画し、現地での保全の実態についても情報を収集する。 ゲノム解析については、日本国内の野生哺乳類や動物園哺乳類の研究を進めるとともに、オーストラリアに渡航し、野生のコアラ、ハリモグラの調査や、共同研究を実施する。ホルモン濃度測定による繁殖管理では、ストレスホルモンに加えて、性ホルモン濃度測定を加え、ストレスと繁殖との関連性を明らかにする。行動観察については、新たな飼育園で実施することで個体差および飼育環境の違いによる影響を調査していく。また今年度は採食行動に主な焦点を当てたが、繁殖などその他の行動についても調べることで保全に関する多様な視点から検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、オーストラリアへの渡航および現地試料の分析を実施できなかった。次年度に実施予定である。
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