ベゴモウイルスがアジアのトウガラシ生産に引き起こす被害解決に向けた国際共同研究

2023 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 21KK0109
• 研究機関: 近畿大学
• 研究代表者: 小枝 壮太 近畿大学, 農学部, 准教授 (00629066)
• 研究分担者: 鍋島 朋之 山形大学, 農学部, 准教授 (10801920) ; 山本 宗立 鹿児島大学, 総合科学域総合研究学系, 准教授 (20528989)
• 研究期間 (年度): 2021-10-07 – 2026-03-31
• キーワード: トウガラシ / ベゴモウイルス / ジェミニウイルス / 黄化葉巻病 / 抵抗性遺伝子 / 圃場評価 / 分子マーカー / 収量性

研究実績の概要

本年度は共同研究機関である台湾のWorld Vegetable Center、インドネシアのSyiah Kuala Universityを研究代表者の小枝と分担者の鍋島の2名で訪問し、研究計画等の打ち合わせを行った。また、予定しているRNA-seqを用いた網羅的な感染ウイルス種の同定を熱帯で収集したRNAを用いて行うために簡易的な施設におけるRNA抽出および保存法の検討を行った。また、共同研究先であるインドネシアのBRINの研究者が中心となり行ったジャワ島でのトウガラシに感染するベゴモウイルスの調査についてデータを取りまとめ、先方が責任著者としてドラフトの準備を行っている。本研究計画の中心的な課題である圃場におけるベゴモウイルス抵抗性トウガラシの評価についてはインドネシアのSyiah Kuala Universityと共同で実施し、pepy-1を有するトウガラシでは感受性品種と比較して大幅に果実生産性が向上することを明らかにして2023年に論文として公開された。今後、インドでの試験を実施するための研究材料の準備、World Vegetable Centerとの計画の相談を進めている。また、2023年11月にはインドのIndian Agricultural Researh Instituteから博士学生の短期受け入れを行った。その繋がりから、現地の指導教官と今後の共同研究について現在打ち合わせを行っている。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

新型コロナウイルス感染症の影響は研究期間の初期に海外渡航を行うことができなかったため台湾への渡航が遅れていたが今年度渡航して目的の打ち合わせを実施することができた。また、最大の目的である抵抗性遺伝子の有用性をインドネシアの圃場において評価し、果実の生産性が大幅に上昇することを論文として取りまとめることができた。インドネシアの他地域やインドなどにおける試験を進めるための共同研究者との打ち合わせ、今後ネットワークを広げて国際的な共同研究を進めるための繋がりを作ることができた。

今後の研究の推進方策

次年度はインドネシア（アチェ、ジャワ）への渡航に加えて、インドへの渡航を計画している。また、インドで圃場試験を実施するための植物材料の準備などを進めていくとともに、インドネシアでの実施を検討しているRNA-seqによる網羅的なウイルス種同定に関する研究を行っていく予定である。

次年度使用額が生じた理由

RNA-seqによる網羅的なウイルス種同定の実験については本年度は準備や条件検討に専念したため、消耗品やシーケンス費用の支出がなかったため。また、研究計画初期に新型コロナウイルス感染症の流行のため海外出張を行うことができなかったため。繰り越した予算は次年度に予定しているインドへの渡航、インドネシアへの渡航、RNA-seq解析などで使用する。

研究成果

• [国際共同研究] World Vegetable Center(その他の国・地域)
  • 国名: その他の国・地域
  • 外国機関名: World Vegetable Center
• [国際共同研究] Syiah Kuala University/Brin(インドネシア)
  • 国名: インドネシア
  • 外国機関名: Syiah Kuala University/Brin
• [雑誌論文] Breakdown of Ty-1-Based Resistance to Tomato Yellow Leaf Curl Virus in Tomato Plants at High Temperatures (2024)
  • 著者名/発表者名: Koeda Sota、Kitawaki Arata
  • 雑誌名: Phytopathology? 巻: 114 ページ: 294～303
  • DOI: 10.1094/PHYTO-04-23-0119-R
  • 査読あり
• [雑誌論文] Pepper (Capsicum annuum) Plants Harboring the Begomovirus Resistance Gene pepy-1 Show Delayed Symptom Progress and High Productivity Under Natural Field Conditions (2023)
  • 著者名/発表者名: Pohan Nadya Syafira、Alfan Gian、Khalil Munawar、Bahagia Putra、Hayati Rayhan、Haidar Yusuf、Hadisah Nurul、Onouchi Mika、Shirono Ryosuke、Kohno Yoshinori、Hamada Ayane、Maruishi Tae、Hachisu Shinkai、Homma Kanami、Zakaria Sabaruddin、Kesumawati Elly、Koeda Sota
  • 雑誌名: The Horticulture Journal 巻: 92 ページ: 36～46
  • DOI: 10.2503/hortj.QH-015
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [雑誌論文] Lisianthus enation leaf curl virus, a begomovirus new to Japan, is more virulent than the prevalent tomato yellow leaf curl virus in Ty-gene-mediated resistant tomato cultivars (2023)
  • 著者名/発表者名: Taniguchi Marina、Sekine Ken-Taro、Koeda Sota
  • 雑誌名: Journal of General Plant Pathology 巻: 89 ページ: 35～46
  • DOI: 10.1007/s10327-022-01101-5
  • 査読あり
• [雑誌論文] Identification of natural sources of resistance to bipartite begomovirus TYLCKaV in Solanum melongena (2023)
  • 著者名/発表者名: Kikkawa Kyohei、Tanaka Minami、Kesumawati Elly、Koeda Sota
  • 雑誌名: Euphytica 巻: 219 ページ: 51
  • DOI: 10.1007/s10681-023-03180-7
  • 査読あり / 国際共著
• [雑誌論文] Cy-1, a major QTL for tomato leaf curl New Delhi virus resistance, harbors a gene encoding a DFDGD-Class RNA-dependent RNA polymerase in cucumber (Cucumis sativus) (2023)
  • 著者名/発表者名: Koeda Sota、Yamamoto Chihiro、Yamamoto Hiroto、Fujishiro Kohei、Mori Ryoma、Okamoto Momoka、Nagano Atsushi J.、Mashiko Takaaki
  • 雑誌名: Research Square 巻: - ページ: -
  • DOI: 10.21203/rs.3.rs-3784112/v1
• [学会発表] 国内で初めて確認されたトルコギキョウひだ葉葉巻ウイルスによるトマト黄化葉巻病とTy遺伝子の有効性調査 (2024)
  • 著者名/発表者名: 小枝壮太・谷口満理奈・関根健太郎
  • 学会等名: 日本植物病理学会
• [学会発表] Pepper yellow leaf curl Aceh virus: a novel recombinant begomovirus exhibits higher virulence than its major putative parent (2024)
  • 著者名/発表者名: Nadya Syafira Pohan・岡部祥子・奥野佳苗・Elly Kesumawati・小枝壮太
  • 学会等名: 日本植物病理学会
• [学会発表] ナス科、ウリ科野菜におけるジェミニウイルス抵抗性と育種利用 (2024)
  • 著者名/発表者名: 小枝壮太
  • 学会等名: 植物ウイルス病研究会
  • 招待講演
• [学会発表] ナスのベゴモウイルス抵抗性遺伝子は第1染色体に座上する (2024)
  • 著者名/発表者名: Nadya Syafira Pohan・吉川恭平・永野 惇・小枝壮太
  • 学会等名: 園芸学会
• [学会発表] メロンのToLCNDV抵抗性に関与するQTLの同定 (2024)
  • 著者名/発表者名: 西川 拓・山本千尋・永野 惇・小枝壮太
  • 学会等名: 園芸学会
• [学会発表] Tomato leaf curl New Delhi virus抵抗性キュウリのF2集団における表現型の評価 (2024)
  • 著者名/発表者名: 中村有希・山本千尋・小枝壮太
  • 学会等名: 園芸学会
• [学会発表] ベゴモウイルスToLCNDVに対して抵抗性を示すメロン育種素材 (2023)
  • 著者名/発表者名: 西川 拓・川原 武・中山実季・清水智貴・溝浦大輝・山本千尋・山本浩登・小枝壮太
  • 学会等名: 園芸学会
• [学会発表] Tomato leaf curl New Delhi virusに対して抵抗性を示す新規キュウリ素材 (2023)
  • 著者名/発表者名: 中村有希・山本千尋・山本浩登・小枝壮太
  • 学会等名: 園芸学会
• [学会発表] トマトにおけるTy-3aによるtomato yellow leaf curl virus抵抗性の高温による崩壊 (2023)
  • 著者名/発表者名: 北脇新大・小枝壮太
  • 学会等名: 園芸学会
• [学会発表] Ty遺伝子の組み合わせがトマトのベゴモウイルス抵抗性に与える影響 (2023)
  • 著者名/発表者名: 霜出萌乃・小枝壮太
  • 学会等名: 園芸学会
• [学会発表] Genetic mapping of begomovirus resistance gene in eggplants (Solanum melongena L.) (2023)
  • 著者名/発表者名: Nadya Syafira Pohan, Kyohei Kikkawa, Sota Koeda
  • 学会等名: The 4th Asian Horticultural Congress
  • 国際学会
• [学会発表] Field evaluation of pepy-1 conferred begomovirus resistance in pepper (Capsicum annuum) (2023)
  • 著者名/発表者名: Nadya Syafira Pohan, Gian Alfan, Munawar Khalil, Putra Bahagia, Rayhan Hayati, Yusuf Haidar, Nurul Hadisah, Mika Onouchi, Ryosuke Shirono, Yoshinori Kohno, Ayane Hamada, Tae Maruishi, Shinkai Hachisu, Kanami Homma, Sabaruddin Zakaria, Elly Kesumawati, Sota Koeda
  • 学会等名: 18th Eucarpia Meeting of the Capsicum and Eggplant Workgroup
  • 国際学会
• [学会発表] Begomovirus resistance gene Pepy-2 encodes DFDGD-class RNA-dependent RNA polymerase in Capsicum (2023)
  • 著者名/発表者名: Sota Koeda, Namiko Mori, Ryo Horiuchi, Chiho Watanabe, Atsushi J. Nagano, Hayato Shiragane
  • 学会等名: 18th Eucarpia Meeting of the Capsicum and Eggplant Workgroup
  • 国際学会
• [備考] 研究者のホームページ
  • URL: https://sites.google.com/site/sotakoeda/home?authuser=0
• [備考] 研究者所属研究室のホームページ
  • URL: https://sites.google.com/site/engeikindai/home?authuser=0