研究課題/領域番号 |
21KK0125
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
塚崎 智也 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (80436716)
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研究分担者 |
八木 俊樹 県立広島大学, 生命環境学部, 教授 (40292833)
市川 宗厳 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (80844662)
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研究期間 (年度) |
2021-10-07 – 2024-03-31
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キーワード | 繊毛 / 鞭毛 / 中心対複合体 / クライオ電子顕微鏡法 |
研究実績の概要 |
真核生物の運動駆動装置である繊毛・鞭毛の中心には、屈曲運動を制御する中心対複合体が存在している。中心対複合体は多数のコンポーネントから構成されており、本研究では中心対複合体の構築や、その機能の詳細について明らかにすることを目指した。Bui研との国際共同研究にて、繊毛から微小管画分を精製し、クライオ電子顕微鏡法解析で撮像・構造解析を行うことで、中心対複合体の予備的な立体構造を得た。また、いくつかの中心対複合体タンパク質のクラミドモナス変異体の作製を行った。これらの変異体鞭毛の微小管画分を質量分析することで、目的タンパク質が欠損していることが確認できた。これらの変異体の中で、遊泳速度が野生株より遅いものが複数確認され、これらの中心対複合体タンパク質の遊泳への重要性が示唆された。 更に、共同研究者の八木らは、機能未知のキネシン様タンパク質2種類に着目し、発現・精製を試みた。精製した組換え型キネシンを用いた生化学実験を行い、どちらも2つの微小管結合部位を分子内に持つことを見出した。また、中心対複合体のキネシン様タンパク質がヌクレオチド条件に依存し、異なる微小管へのアフィニティーを示すというプレリミナリーな結果を得た。これらの特徴をもつ中心対複合体キネシンが周辺微小管の滑り運動を調節して繊毛の運動に貢献すると考えられる。塚崎と市川は、微小管結合タンパク質をチューブリンと共重合したときの影響を電子顕微鏡観察で調べた。国際共同研究による高度な電子顕微鏡解析のため、市川が海外出張を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中心対複合体タンパク質の変異体の質量分析を行い、クライオ電子顕微鏡法によって中心対複合体の予備的な立体構造を得ることもできた。また、中心対複合体の構成タンパク質の精製にも成功した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、得られた予備的な中心対複合体の構造解析をさらに進め、中心対複合体のモデルを構築していく。また、変異体クラミドモナスの遊泳についてもさらに詳細に解析を進める。高純度で精製できた中心対複合体構成タンパク質については、微小管との結合実験を進め、詳細な結合様式を明らかにするとともに、微小管との複合体構造を、国際共同研究にて海外に出張しクライオ電子顕微鏡法を用いて解析していく。タンパク質全長を精製することが難しい場合、その一部を合成ペプチドとして合成し、微小管と重合することで、その微小管重合への影響をみる。また、組換え型キネシンには生化学実験により見出した微小管結合部位があり、中心対複合体キネシンが周辺微小管の滑り運動を調節して繊毛の運動に貢献すると考えられる。その調節機構の詳細を明らかにするために,今後は,これらキネシンの局在と機能を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナなどの影響により、予定通り研究を進められないところがあったため次年度使用額が生じた。遅れた研究と合わせて、次年度に研究を進めていく。
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