研究課題/領域番号 |
21KK0126
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
塩田 拓也 宮崎大学, キャリアマネジメント推進機構, 准教授 (20819304)
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研究分担者 |
田岡 東 金沢大学, 生命理工学系, 准教授 (20401888)
宮崎 亮次 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (30827564)
竹田 弘法 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 基礎科学特別研究員 (80816588)
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研究期間 (年度) |
2021-10-07 – 2024-03-31
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キーワード | 中性子反射率法 / BAM複合体 |
研究実績の概要 |
本研究では、生体高分子の高い時空間分解能での解析を実現する手法として、中性子反射率法を中心に、in vivoでの架橋法、クライオ電子顕微鏡による構造解 析、高速AFM、そして単離膜を用いたin vitro再構築実験の5つの多角的な手法を駆使し、これらを組み合わせた統合的な解析法の確立を目指している。そのモデルケースとして、大腸菌のBAM複合体を中心とした外膜タンパク質輸送複合体および、磁性細菌のマグネトソーム形成タンパク質を用いる。本年度(2年目)は、豪州の渡航制限が解除されたため、研究代表者が国際共同研究者であるMoansh大学Shen博士を訪ね、中性子反射率法の計測結果を解析し、BAM複合体のサブユニットBamCが基質結合に呼応してダイナミックに構造変化することを見出した。また、BAM複合体のサブユニットが担当する基質のカテゴライズに成功した。BAM複合体の基質認識の初期段階を抽出し、その部分の構造解析のためのタンパク質調整に成功した。新生外膜タンパク質が内膜のSecトランスロコンからBAM複合体へと輸送される過程について、PpiD/YfgMというタンパク質が関与することを明らかにした。磁性細菌のマグネトソーム膜小胞形成に関する研究として、マグネトソーム鎖の長さを調節する蛋白質McaA/Bを発見した。一方、高速AFMによる膜小胞観察を目的とした研究では、AFM位相像により細菌表層に結合した膜小胞の物性が変化することを発見し、膜小胞の融合過程のモデルを提案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中性子反射率法では、共同研究が進展し、これまでのX線結晶構造解析や、クライオ電子顕微鏡解析では捉えることができなかったBAM複合体の構造変化を明らかにすることができた。また、BAM複合体のサブユニットごとの役割を解明することができ、今後の統合的な解析の基盤が形成できた。これらの成果を踏まえた、新規構造解析に向けたサンプル調整も順調に進んでいる。また、BAM複合体へ基質を送る分子システムについては、架橋法に加えコンピューターによる構造予測を駆使し、興味深い成果を得ることができている。また、磁性細菌の研究に関しては、新規因子が相次いで発見されており大きな進展があった。
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今後の研究の推進方策 |
中性子反射率法で明らかにできた、サブユニットのダイナミックな構造変化を捉える方法を検討し、結晶構造解析およびin vivo部位特異的光架橋法でより詳細に解析することを目指す。また、in silico解析と部位特異的光架橋法で新規に同定した因子であるPpiD/YfgMについて、中性子反射率法での解析のためのサンプル調整や、単離膜画分での解析を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度にコロナウイルスを原因とした渡航制限より、中性子反射率法の解析が遅れ、それに関連して渡航費などが後ろ倒しになった。また、その解析結果をもとに実施する予定であった構造解析のための実験を後ろ倒しにしたことによって次年度使用額が生じた。中性子反射率法の測定結果が出たため、準備を進めていた実験を現在進めており研究は滞りなく進めることができる。
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