研究課題/領域番号 |
21KK0156
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
棗田 学 新潟大学, 脳研究所, 特任准教授 (00515728)
|
研究分担者 |
岡田 正康 新潟大学, 医歯学総合病院, 助教 (00626492)
村井 純子 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科(藤沢), 特任准教授 (60532603)
柿田 明美 新潟大学, 脳研究所, 教授 (80281012)
|
研究期間 (年度) |
2021-10-07 – 2025-03-31
|
キーワード | Schlafen11 / 脳腫瘍 / 髄芽腫 / 化学療法感受性 |
研究実績の概要 |
SLFN11はDNA障害型抗がん剤に対する感受性と強く相関することが知られている。2022年度は、DNA障害型抗がん剤であるシスプラチン(CDDP)が含まれた化学療法レジメンが標準的に投与される髄芽腫におけるSLFN11発現の解析をすすめた。髄芽腫症例におけるSLFN11発現を免疫染色法で評価し、髄芽腫細胞株でその発現とDNA障害型抗がん剤への感受性の関係を検討した。髄芽腫分子亜群別SLFN11の発現を免疫染色および公開データベースで検索した所、予後良好といわれているWNT群およびSHH群の一部でSLFN11が高発現していたが、Group3/4の症例はSLFN11低発現であった。また、4つの髄芽腫細胞株を用いてCDDPへの感受性につき検討した所、SLFN11高発現である細胞株の方がCDDPの感受性が高く、また、CRISPR/Cas9を用いたSLFN11ノックアウトによりCDDPの殺細胞効果が低下し、SLFN11強制発現株ではCDDPへの感受性を高めることができた。さらにSLFN11発現はそのプロモーター領域のメチル化によって制御されることを証明し、 SLFN11低発現株に対してHDAC阻害剤RG2833を投与することでSLFN11発現が上昇し、CDDPとの相乗効果を示した。 SLFN11高発現の髄芽腫症例はCDDPへの感受性が高く、予後良好である可能性が高く、治療強度の選択にも有用と思われた。以上の結果をNeuro-Oncology誌(IF2022 15.9)に報告した。 2023年度はさらに髄芽腫以外の脳腫瘍におけるSLFN11発現解析を行った。化学療法感受性の比較的高いPCNSLやgliosarcomaの症例でSLFN11は高発現し、化学療法感受性の低い上衣腫ではSLFN11低発現であった。これらの脳腫瘍の培養細胞株を用いてDNA障害型抗がん剤への感受性を確認している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
コロナ禍で、国際共同研究や交流に制限がある中、海外共同研究者であるEberhart教授のラボに留学していた研究協力者の中田聡先生とZoom会議を密に行い、研究を進めることができた。また、研究分担者である村井純子先生の恩師である米国NIH Pommier教授の紹介で、脳腫瘍を対象としてSLFN11の研究を行っている研究者を複数人紹介して頂く事ができ、次々にデータを捻出する事が出来た。コロナ禍によって、ピンチをチャンスに変えることができた、新しい国際共同研究のスタイルを見出すことができた。
|
今後の研究の推進方策 |
髄芽腫の研究はまとまりました。今後、化学療法の感受性が比較的高いと知られているリンパ腫や胚細胞性腫瘍、化学療法に比較的抵抗性である悪性神経膠腫、上衣腫、脳幹グリオーマにおけるSLFN11発現を解析し、細胞株を用いた研究を進める予定である。コロナ禍により制限されていた海外への渡航も緩和されつつあ り、2023年度はEberhart先生のラボに訪問予定である。In personで意見交換ができるようになり、今後、本研究の進捗が加速することが期待される。
|
次年度使用額が生じた理由 |
円安および物価高騰により、渡米して国際共同研究の活動を行うのに費用が多くかかるようになった。来年度、活動を行えるよう、今年は一部の研究費を次年度に繰り越した。
|